2019年12月14日にBS1で放送された『球辞苑』で桑田真澄がマウンドについてのあれこれをめちゃくちゃ細かく語っています。
―プレートの使い方
桑田 最大限に有効活用するということですね。僕は3塁側からも1塁側からも両方、そして真ん中からも立ち位置を変えて投げ分けてました。
―試合中に立つ位置を変える効果とは?
桑田 例えば3塁寄りから右バッターのアウトローに投げるストレートってこの角度ですよね。
桑田 ところが、1塁寄りから右バッターのインコースのストレートに投げるとこの角度になって全く違う角度になるじゃないですか。
桑田 だからストレートでも真ん中、3塁側、1塁側から投げるストレートは要するに違うボールになるんですね。
―プレートで打者との駆け引き
桑田 僕の場合はさりげなく、ずーっと3塁側から投げるんです。それで追い込んでウイニングショットというときにバッターに気付かれないように1塁側に立つんです。そうするとバッターが分からない間に移動してるんです、それが1つ。そしてもう1つが追い込んでから次ウイニングショットだなってときにサインを見てから「うんうん」と頷いて、それから右足でプレートを3塁側から1塁側にズラして。「俺は今プレートをズラしたで~見たか?」というのを敢えて見せる。そうするとバッターは「踏む位置を変えたな」とやっぱり思うじゃないですか。バッターに「何だろう?」と思わせることも大事なんですよ。ただ、コントロールに自信のないピッチャーはいつも同じところから同じ感覚で投げたいというのがあるんですね。僕はプレートのどの位置から投げようが全く関係ないです。
―マウンド周辺のフィールディングについて
桑田 マウンドの傾斜を制さない限りエースにはなれない。僕はそう思っています。
―厄介なことがある
桑田 球場によってマウンドの傾斜の勾配が違うんですよね。2塁方向への傾斜が『平らな面があって削られている』とか『なだらかに削られている』とか色んなマウンドが球場によってあります。
―傾斜の違いで気を付けること1
桑田 フライを上を向いてと捕るときに「捕れた」と思ったら後ろ方向にガクっときたら捕れない場合がありますよね。だからボールを見ながら「ここのマウンドの傾斜は急だったな」というのを頭に入れてボールを見て捕るんですよね。
―傾斜の違いで気を付けること2
桑田 ピッチャーってキャッチャーに向かって傾斜があるから見下ろす角度で普段投げますよね。ところが傾斜があるところから回転して2塁へ投げるときに左足の方が高くなりますよね。
―何故ここまでマウンドでの守備にこだわる?
桑田 三振をたくさん取るタイプのピッチャーじゃなかったので、自分の周辺にくるボールは絶対に捕りたいと。股の下とかグラブの届く範囲を抜かれるのがスゴく僕は屈辱でしたね。
―速い打球を捕る技術
桑田 例えば右側に速いライナーやゴロがきた時にみんな大体ここで捕ろうとするんですね。
桑田 だけど、ここで間に合わない時は僕は少し後ろで捕ろうとするんですね。
桑田 グラブの位置のところで間に合わないから、捕るポイントを少し後ろにズラしてこう捕るんですね。
桑田 そうすると間に合うんですね。左側でも同じですね。カーンときて真横にグラブを差し出すと間に合わないんです。だから少し後ろにズラして捕ると間に合うんです。
―1塁線、3塁線の打球
桑田 ライン際のボールがファウルゾーンに切れやすい球場はセーフティーバントをされた時に「ここはファウルだから捕らないでおこう(ファウルになる)」ということもできるんですね。長年やってて、例えばサードに「捕るな!」と言ったこともありますし。「何で捕るなと言ったんだ?」と言われたら「先輩、ここはあの打球だと切れる球場なんですよ」と。「何で分かったんだ?」と聞かれて、「練習の時に調べといたんで」とね。
―そのサードは原(辰徳)さんですか?
桑田 いや!そんな(笑) そんな事は言えない(苦笑) 大体サードの人ってあんまり考えてないんで(笑)
―最後に桑田にとってマウンドとは?
桑田 自分の力を発揮する最高の場所だと思うんですけど。ただ、このマウンドの傾斜というのは非常に難しいです。この傾斜に対応できるかできないかがいいピッチャーか、そうじゃないピッチャーの差なんですね。やっぱりいいピッチャーを育てるのもマウンドだと思いますので。全国にはどれぐらいの数の球場があるか分からないですけど、ぜひグラウンドキーパーの方はもうちょっとマウンドに気を付けて整備していただきたいなと。
以上です。