20172月にBS1で放送された『球辞苑』でかつて西武ライオンズで活躍した左腕・永射保が『左殺し』について語っています。

 



収録当時の永射さんはまだご存命でスナックを経営していました。

 

永射は80年代の第1次西武黄金期を支えた異色のリリーバー。独特なクロスステップと左のサイドハンドという変則フォームを駆使し、パ・リーグが誇る左のスラッガー達をワンポイントで打ち取った元祖左殺しだ。

 

―今回のテーマは『左殺し』

永射 『左殺し』だったら僕でしょうね。ワンポイントとか左バッターに対する絶対的なワンポイントは僕でしょうね。

 

揺るぎない自信とプライド。それもそのはず。レジェンド永射は4000打席以上の通算打率.320の日本記録保持者、元ロッテのレロン・リーに対し通算被打率.153と完璧に抑え込んだ。リーはサウスポー永射に手を焼き半ばヤケクソで右打席に立ったこともあった。

 

 

更に永射を恐れていたのが1981年のホームラン王・日本ハムのトニー・ソレイタだ。永射はソレイタを通算被打率.116と抑え込む。そんな永射の恐ろしさをこれでもかと思い知らされたのが1980年9月5日の西武対日本ハムの試合。前日の試合から絶好調のソレイタは日本タイ記録の4打席連続のホームランをかっ飛ばしていた。しかし、記録がかかった5打席目に天敵・永射が登板すると・・・結果はなすすべもなく三球三振。

 

―ソレイタ封じについて

永射 ソレイタのときはど真ん中の真っ直ぐでいい。自分から崩れていく。

 

―左殺しの極意

永射 一言で言えば『ローリング』か命であり、もうローリングしかないわけですよ。ローリングが命ってね。

 

―ローリングとは?

永射 ローリングとは自分の体を動かす。(※セットポジションで背筋を立てるところから軽く会釈をする感じの動き)

 

 

永射 バッターもその動きにつられて動いてしまう。普通は自分の定まったところでビシャっと止まって打つじゃないですか。それがちょっとでもつられて動いてフォームに狂いが出るとホームランにならない。

 

―バッターの体をローリングさせる?

永射 そういうことです。自分だけじゃなく相手もローリングに誘う。

 

ここから実演

 

永射 このポジションが最初。

 

 

永井 ここからこうなる。

 

 

永井 要するにこの写真のように(飛んでいる)鷲のような形になる。こう体を折るのがローリング。

 

 

永射 たったこれだけ。足を踏み込む間にローリングを作るわけですよ。

 

実際の投球映像で分析してみよう。

 

始動はオーバースロー

 

ここからアンダースローのように体を沈める

 

この動きによってバッターの目線を上から下に動かして幻惑させるのだ。それが永射の言う『ローリング』という動き。更にこの動きにはバッターを惑わすローリングが隠されている。

 

―もう1つのローリングとは

永射 こう鷲に入って。

 

 

永射 着地する足をズラすような感じでいく。

 

 

永射 この時点でまだ足は地面に着いてない。浮いてるんです。「地面に着いたよ」とだます。そこでバッターがトップに入った時に、もう1歩ちょっと前に行く。そこでバッターの体がちょっと前に行く。でもそこでまだもう1回だます。

 

―それもローリング?

永射 ローリングのうちのひとつ。

 

実際の映像で見てみよう

 

1発目のカモフラージュ

 

2発目のカモフラージュ

 

これによりバッターは目線に加え、タイミングまでも狂わされる。

 

―ローリングの最後の仕上げ

永射 まだやります。今度は足をクロスに踏み込み。

 

バッターの目線とタイミングをズラしたら、1塁側に大きくクロスステップする。

 

 

すると左バッターは背中からボールが来るように感じ、体が開いてしまうのだ。

 

永射 背中の方から来る球に左バッターは体を開いてしまう。そしてアウトコースに投げ込む。

 

ローリングを駆使したクロスステップからアウトコースのギリギリに逃げていくウイニングショット。永射は左バッターが嫌がる、あらゆる技を取り入れあのフォームを完成させたのだ。

 

―何故そこまで徹底したのか?

永射 ローリングでバッターを動かさなければ僕のスピードでは通用しない。ローリングが僕の命であり、野球人生そのものです。

 

 

以上です。

30年以上前なんですけど、かなり考え尽くされてます。
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