20172月にBS1で放送された『球辞苑』で長年左キラーとして活躍している北海道日本ハムファイターズの宮西尚生が左殺しについて語っています。

 

2017年の2月に放送されたものです。

 

2016年の宮西は左打者を78打数12安打、打率.154と圧倒的な数字を残していた。そして驚くべきは、決して速くない140キロ台のストレートと生命線のスライダーのほぼ2つの球種で左打者を抑え込むこと。更に2016年までのプロ9年間で左バッターに打たれたホームランはたったの5本。何故ここまで左に強いのか?

 

―左キラーと言われることについて

宮西 そういうふうに言われるのは本当に自分としては一番嬉しい言葉ですね。やっぱり左利きって左打者を抑えることがスゴい武器になるんで。そういう意味では1年目から左だけには打たれないように心掛けてやってきたんで。

 

―左打者の攻略のテクニック

宮西 僕はサイドであろうが、スリークォーターであろうが、「ここじゃないと投げれない」という場所を作らない。横の角度をつけたい時は肘をおろしますし、力で押したい時は若干ひじを上にあげますし。なるべく相手バッターのタイミングをズラすようにやってますね。

 

投球フォームをあえて一定にせず球種ごとに腕の角度を変えている。

 

 

そしてこの僅かな変化が打者とのタイミングを狂わせていたのだ。更にピッチングの組み立てにもこだわりがある。

 

 

―宮西の投球術とは

宮西 僕は別にコントロールがいいわけでもないし、そして球種が多いわけでもないで、本当に最後に「真っ直ぐで決めるのか、スライダーで決めるのか」だけ決めて逆算して投球してるつもりですね。真っ直ぐとスライダーしかないので、どちらかの球種を待つ確率を上げさせて逆の球を投げるというのが僕の生き方なんで。

 

(2016年までの)9年間で会心の投球

宮西 9年間の今までの経験が全て生きた投球だったなと改めて思います。

 

それは大谷が二刀流を中心にしてリーグ優勝した日本ハムと25年ぶりのリーグ優勝で大いに盛り上がった広島の2016年の日本シリーズ。札幌ドームに広島を迎えた第4戦。3対1と日本ハムのリードで9回のマウンドを託された宮西。しかし、2アウト満塁の一打逆転のピンチで迎えたバッターはセ・リーグ屈指の強打者・丸。

 

―宮西が選んだウイニングショット

宮西 スライダーで決めたいなっていうのは最初から決めていたんですけど。

 

この打席の球種とコースとカウント(4球目まで)
1球目 外へのスライダーでボール
2球目 内寄りの高めストレートでストライク
3球目 低めにスライダーでボール
4球目 外角低めにスライダーで空振り

 

 

ここで2ボール2ストライクとなり普通はフルカウントにしたくないが宮西はここを勝負所とは考えていなかった。

 

5球目の選択

宮西 ただ、「このままスライダーで」となると丸もスゴくいいバッターなので、簡単には絶対に打ち取れないだろうなというのがスゴいあって、僕の中でスライダーをわざとボールからボールにしてフルカウントにしたんですよ。(※5球目にスライダー)

 

フルカウントとなり押し出しのリスクもある中、2ボール2ストライクから敢えてボール球の選択をしてフルカウントにした宮西。ここまで決め球に考えていたスライダーを4球投げ、そのうち3球をボールにしていた。

 

この打席の球種とコースとカウント(5球目まで)
1球目 外へのスライダーボール
2球目 内寄りの高めストレートでストライク
3球目 低めにスライダーボール
4球目 外角低めにスライダーで空振り
5球目 外角に外れるスライダーボール

 

 

―この選択について

宮西 バッターの中で「スライダーがこれだけ外れてるんだったら、やっぱりスライダーはボールになるんやろうな」と。バッターはここで次は真っ直ぐを待つ確率って上げるじゃないですか。「次は真っ直ぐで来るだろう」とちょっとでも頭の中に入れてほしかったんですよね。

 

「ストライクを取りにくるならストレート」と少しでもそう思わせればこっちのもの。この対戦で宮西は見事に外角のスライダーを投げ込み好打者・丸を空振り三振に斬って取り、チームが勝利した。

 

―最後にスライダーで抑えて

宮西 最後の決め球はストライクからボールになるように、自分の中で投げ切れたら必ず三振に取れると思っていたんですよ。それが出来たのはピッチャーとしてのスゴい成長というか、ここまで育ててくれたものが一気に出た試合でした。

 

―左キラーとしての危機感はある?

宮西 毎年怖いです。不安でしかないです。やっぱり左打者も軌道というのはスゴいイメージが湧いてると思うし、それ以上のものを何か自分の中で出さないと今年もやっていけないと思うんで。そこは去年以上のものを出していきたいと思います。(※これは20172月に放送されたもの)

 

 

以上です。

丸の打席のシナリオが完璧ですね。
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