2020229日にBS1で放送された『球辞苑』で慶応義塾大学 環境情報学部 準教授の加藤貴昭先生が選球眼のメカニズムについて語っています。

解説は慶応大学 環境情報学部 加藤貴昭准教授。人間工学をベースに、バッターの視野やバッティングと視覚の関係について研究を行っている。選手としての経験もあり、慶応大学野球部では主将を務め、アメリカではシカゴ・カブス傘下のマイナーリーグでも2年間プレーも経験もある。

 

―選球眼について

加藤 「ボールをよく見なさい」と言うんですけど、実際ボールはよく見えないんですよ。選球眼を良くするために目だけを鍛えるのはあまり意味がないと思います。

 

―「ボールはよく見えない」について

加藤 ボールは非常に速く移動しているので、球速145キロぐらいの球をピッチャーが投げると0.46秒ぐらいでホームプレートに到達します。そのうちの0.16秒は大体スイングの時間にかかります。

 

ホーム到達時間0.46秒-スイング0.16秒選球時間0.30秒

 

加藤 そのなかで人間が見てから反応するまでが0.17秒と言われているんですね。

 

選球時間0.30秒-見てから反応0.17秒=残り0.13秒

 

加藤 そうなると残りは0.13秒しかないので、物を見て、頭でこう打とうと考えて、それから体を動かす。それらを考えると、人間の情報処理能力をだと明らかに間に合わないんですよね。

 

ピッチャーからホームまでの投球に0.46秒の場合、反応からスイングまでの時間を除くとボールを見極めて判断する時間は僅か0.13秒しかない。つまりボールを目で追っていては到底間に合わないという事なのだ。では、選球眼のいいバッターはどのように対応しているのか?

 

 

―選球眼に優れたバッターの対応方法

加藤 ピッチャーがボールをリリースするまでの間にある程度の予測はしっかりできている。ただ、難しいのは投球をどこまで予測できるのかっていうところなんですけど、「こういうボールが来たらこう体が勝手に動くんだ」ということが勝手にできている、というのが選球眼が良いということになるのかなと。

 

選球眼が良いバッターはピッチャーの投球フォーム等から予め球種や軌道を予測し、リリースの瞬間には打つ打たないの判断ができているのだという。

 

―瞬時の判断を可能にする鍵は視線の動かし方

加藤 実際は『ボールを追う』のではなくて、『ちょっと予測ができたら目を離してボールを待つ』という感じ。予測的に目を早めに動かす能力が非常に大事ということは言われています。

 

予測した軌道の先へ視線を動かしボールを待つ。選球眼の良いバッターほど実際の軌道と予測のズレが小さいという。

 

―選球眼の良いバッターとは

加藤 自分が予測したイメージが実際の物理的な世界のボールの動きが一致していることが選球眼の良いバッターになるかなと思いますね。なので、トップアスリートになればなるほど心理的なイメージと物理的な世界がかなり一致しているので。自分が「ここに来ている」と予測した所にちゃんとボールが来ている、ということが出来るかどうかが非常に大事なエキスパートになるための条件なのかなと思います。

 

―選球眼を鍛えるトレーニング

加藤 私は純粋に生きたボールを見ることが一番大事かなと思いますね。例えば王貞治さんはバッティング練習が終わったら、すぐにブルペンに行かれて、ずっとピッチャーが投げる球を見る練習をされていたという話を聞いたことがあるんですけど。本当にそれが一番大事な練習になるのかなと。特に見ることに関しては。

 

 

以上です。

メカニズムが分かってもできるのは超人のみかなと思います。
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