2019127日にBS1で放送された『球辞苑』で3塁ベースコーチについて伊原春樹が語っています。

 



伊原春樹は80年代~90年代の西武黄金期を3塁ベースコーチとして支え、日本一に輝くこと6回。阪神・巨人時代を含めると20年以上、辣腕を振るったまさにミスター3塁ベースコーチ。

 

3塁コーチに必要なもの

―今回のテーマは『ベースコーチ』です

伊原 はい。何でも聞いてください。

 

3塁ベースコーチとはどのようなものか

伊原 サードコーチャーというのは指揮者と同じじゃないかと思うんですよね。手の動き1つで回れか、ストップか。それによって選手が動くわけですからね。

 

3塁ベースコーチにはどのような資質が必要か

伊原 本当に生真面目なガチガチの固い人というか、真面目な人では務まらないんじゃないですか。例えば腕を回してホームでランナーがアウトになりますよね。そうすると、監督によっては「なぜあそこで行かせたのか」とね・・・。そういうふうに言われると神経をすり減らしていくわけですよ。ところが、ある程度は「ちゃらんぽらんでいいや!」という性格だったら、「誰だって失敗はあるわい!次見とけ!」というものがないとサードコーチはちょっと難しいんじゃないかなと思いますね。

 

一瞬の判断で行うランナーへの指示に失敗は付き物。クヨクヨしないいい加減さと開き直れるしたたかさ。それがなければ神経がすり減り、勝負を懸けた攻めのジャッジが出来なくなると言うのだ。

 

―伊原のジャッジの基準

伊原 僕の持論では五分五分だったら、行かせるつもりですから。それでちょっとでも返球が逸れたらセーフなるし、ドンピシャの返球が来れば「これはもうしょうがない」と。

 

 

好投手たちのクセ

―伊原の真骨頂

伊原 ピッチャーのクセをずっと見ていると分かるんですよね。

 

伊原の優れているところはその観察眼。とりわけその分析に執念を燃やしたのが90年代のパ・リーグで速球とフォークを武器に西武打線を苦しめた伊良部秀輝だ。

 

―伊良部のクセ

伊原 伊良部はフォークの場合に右手でボールを挟みますから、指を広げなくちゃならないんでその分だけ若干グローブが開くんですよ。

 

 

ハッキリいって大画面でも分からない。素人目には全く違いは分からないが、そのクセを見抜き西武打線は伊良部を苦にしなくなったという。

 

―野茂のクセ

伊原 野茂の場合はフォークの時にボールを挟んだ手首が少しだけキュッと三塁側に回る(手首が上を向く方向に回る)。若干手首が回るんですよ。一瞬だけフォークの時に回った。

 

 

伊原の特権

更に名三塁コーチだからこそ与えられた特権が伊原にはあった。

 

―特権とは?

伊原 森監督のときも、東尾監督のときも、原監督のときも盗塁のサインを出すのは全部伊原さんにお任せしますと。全部僕が3塁コーチャーズボックスから出してました。

 

普通はベンチから出る盗塁のサインを伊原に一任されていた。信頼されるのは嬉しい反面、とてつもない重圧がのし掛かったという。

 

―とてつもない重圧

伊原 例えば緊迫した場面で盗塁のサインを出しますよね。「頼むよ走ってくれ、セーフになってくれよ」と心の中で願っていたらね、胸の鼓動が聞こえるんですよ。ドクンドクンドクンと。

 

―忘れられないシーン

伊原 やはり今までで一番胸の鼓動が聞こえてきたのは広島との日本シリーズ。

 

それは1991年の広島との日本シリーズ第7戦。その年、沢村賞に輝いた広島のエース佐々岡に西武打線はランナーを出すものの無得点に抑え込まれていた。この時、伊原は佐々岡のある一点を見つめていたという。

 

―佐々岡のある一点とは

伊原 僕はずーっと佐々岡のクセを、ホームに投げるのか牽制なのかを、ずっと見ているわけですよね。そうすると佐々岡はランナーが出たら初球は必ず足を上げるのが大きかった。クイックをしない。初球は必ず。

 

その瞬間は5回裏の0-1で西武ビハインドのノーアウト走者なしで訪れた。ここでこの回の先頭の石毛がノーアウトからヒットで出塁。ここで佐々岡が大きく足を上げる初球を狙うというものだ。

 

 

―石毛がヒットで出塁

伊原 「よし!」と。それでサインを出すわけですよ。盗塁のサインを出したら石毛がこんな顔をするわけですよ。(※驚いた顔)

 

 

伊原 それでスタート前。鼓動ですよ。「佐々岡さん、頼みますよ・・・」と。

 

その瞬間、佐々岡の足が大きく上がった。

 

 

盗塁は見事に成功。読み通り完璧にモーションを盗んでいた。この後、鈴木健が同点タイムリーを放ち試合の流れを大きく変え、逆転で見事日本一に輝いた。

 

―改めて伊原春樹にとって3塁ベースコーチとは?

伊原 まあ本当にやりがいのある、野球の全てを勉強できる場所ですね。

 

 

以上です。

黄金期を支えた人ですね。
おすすめの記事