2018年11月19日にフジテレビONEで放送された「プロ野球ニュース」で2018年シーズンで引退し、2軍監督に就任した松井稼頭央がスイッチヒッター挑戦について語っています。野村弘樹、高木豊、片岡篤史と共に語っています。
野村 まず松井稼頭央の意識と言いますか、どういうものを志していたのかを聞きたい。
松井 それはスイッチヒッターになってからですか?
野村 どっちもです。
松井 うーん。
野村 もともとは右バッター?
松井 そうです。プロ3年目から本格的にスイッチヒッターに取り組んだんですけど。
野村 それを取り組むキッカケは?
松井 2年目の時に45試合ぐらい出たんですけど、その時に対右ピッチャーで打率が2割もなかったんですよ。
野村 はい。
松井 それで対左ピッチャーには3割近くあったと思うんですけど、それでちょうど土井正博バッティングコーチから「足を使えば率が上がるんじゃないか」という話からスイッチヒッター転向になったんですけど。
野村 うん。でも、左で挑戦するのは勇気がいったんじゃないの?それまではやったことがあったの?
松井 なかったですね。その2年目の春に一度だけスイッチヒッターに挑戦したんですけど、もうやることが他にあり過ぎたんで、そこまでたどり着かなかったんですよね。
野村 うーん。
松井 それで2年目のシーズンで対右ピッチャーで2割なかったのでやるなら今かなって思いました。
野村 なるほどね。それで結果的には正解だったよね。
松井 そうですね。
野村 片岡さん、パ・リーグで一緒にやっていて、スイッチヒッター、それもホームランも打てるスイッチヒッターってなかなかいないじゃないですか。相手ベンチからはどういう感じで見てましたか?
片岡 今、野村さんが言われた通り、もともと左バッターじゃないかっていうぐらいイメージが左バッターでしょ。
野村 はい。
片岡 だから、もちろん猛練習で形を作ったと思うんですけど、どういう練習を左バッターではまずしたの?
松井 まずは土井さんからの指導でティーバッティングをやった後にマシンに立たされまして。
片岡 うん。
松井 本当にインコースぎりぎりに立って、空振りしたら右膝に当たるぐらいの所に立たされまして、それでしっかりと壁を作って、膝の前でボールを捌きなさいっていうところから入ったのと、あとは体の右側に防具を身に付けまして。
片岡 それよく聞くよね。デッドボールの練習するんでしょ。
松井 はい。
片岡 開かずに逃げる練習というかな。
松井 はい。
高木 これ左バッターが自分のモノになった年は覚えてる?そういうモノを掴んだというか。
松井 いやぁ、やっぱりトリプルスリーをやった時ぐらいじゃないですかね。
高木 その時からしっくりきた感じ。
松井 その時にきたような感じがしましたね。
高木 トリプルスリーって左バッターを始めてどれぐらい経ってるんだっけ?
松井 2002年なんで、5年ぐらいですかね。
高木 あぁ、やっぱり時間がかかったということだよね。
松井 でも自分らしさというのを考えると、やっぱり99年ですね。3割を打った98年、99年ぐらいからですね。
高木 なるほど。じゃあ、それまでは左で打席に立つのは不安があったんだ。
松井 そうですね。
野村 じゃあ、やっぱり打席に立って、しっくりくるのは右だったということだよね。
松井 初めは右ですね。
野村 どれぐらい練習をして本番を迎えたの?
松井 初めから東尾監督に使って頂いたので、その試合の中で成長させて頂いたので。
野村 うん。
松井 だから得点圏にいくと、右打席に立てと言われて。
一同 ハハハ(笑)
野村 あっ、右ピッチャーでもね。
松井 はい。
高木 だけどさ、やり始めて右バッターが本職だったでしょ。それでピッチャーによって左打席に立つと、試合の中で物凄く違和感がなかった?
松井 ありました。その時に当時は須藤豊さんがヘッドコーチだったんで、まず人格を変えなさいということを1年間、口酸っぱく言われました。
高木 人格から(笑)
片岡 どういう風に人格を変えるの?
松井 まず「性格を右左で変えなさい」と。
野村 あぁぁ。バッターとしてのね。
松井 はい。やっぱりどうしても右のイメージが強いので、考え方とかを右に寄せたくなるじゃないですか。
高木 うん。
松井 でもやっぱり右と左は違うので、右左の性格を変えなさいというところからでした。
野付 じゃあ、稼頭央は2人いると思っておかないといけないと。右バッターの松井稼頭央と左バッター松井稼頭央で。
松井 はい。
野村 なるほどね。
片岡 松井の中でのバッティングは右と左では全然違うもの?
松井 違いますね。
片岡 全く違う?
松井 はい。
高木 これバットも変えたりしてたの?
松井 初めは変えてました。
高木 例えば右だとどんなのを使ってたの?
松井 右は普通に今まで使っていたバットで、左はタイカッブ的なバットを使ってまして。
高木 うん。
松井 それが段々と同じバットになってきたんですよ。でも、右で持った感覚と左で持った感覚が違うんで、右で持ってしっくりくる場所に『右』って書いて。
一同 ハハハ(笑)
松井 左のしっくりくる場所には『左』って書いて。
野村 同じバットなんでしょ?
松井 同じバットです。
野村 でも、違うの?
松井 持った感覚が違う。
高木 それスゴい分かる。
野村 そうなんですか?
高木 俺も一時期ちょっとスイッチヒッターをやったことがあって。
野村 はい。
高木 もう全く世界が変わるから。だから、性格を変えなさいというのも、分かるような気がする。
野村 同じバットでも感覚が違うんだね。
松井 違います。
高木 違うよね。だってそもそもマメのできかたがそもそも違うから。感触が違うということじゃないの。
松井 調子が悪いときは右で握る場所で左打席に立つこともありましたし。
野村 うーん。
松井 3本ぐらいバットを握って目を瞑って選んで打席に向かう時もありましたし。
高木 じゃあ、遠征に行くときにバットケースを2つ担いで移動してたの?
松井 いや、1つプラス新しいバットを持って行ってました。やっぱりバット10本あったら、右でも左でも合うのが1本ぐらいなんで。
高木 そうだよねぇ。
松井 はい。
以上です。
最強のスイッチヒッター。