2019年10月1日にBS1で放送された『ワースポ×MLB』で2019年にホームランが史上最多となりました。その要因を様々な角度から分析しています。
ホームランは勝利に直結
試合を全てひっくり返す可能性があるホームラン。ホームランはチームを勝利に導き、打者の価値を高める。この魅力はバッターをフライボール革命へと駆り立てた。現在、MLBでは誰もがホームランを追い求める時代に突入している。
2019年シーズンはメジャー史上最多の年間6776本のホームランが乱れ飛んだ。ホームラン上位のチームがポストシーズンに進出。まさにホームランこそが勝利の重要なカギとなっているのは間違いない。
2019年メジャー本塁打ランキング
1位 ツインズ 307本→地区優勝
2位 ヤンキース 306本→地区優勝
3位 アストロズ 288本→地区優勝
4位 ドジャース 279本→地区優勝
5位 アスレチックス 257本→WCで進出
2位 ヤンキース 306本→地区優勝
3位 アストロズ 288本→地区優勝
4位 ドジャース 279本→地区優勝
5位 アスレチックス 257本→WCで進出
フライボール革命の流れはこれまで最多ホームランだった2017年と比較すると今年は打球の初速、そして角度も上昇している。
MLBの平均打撃データ | |||
2017 | 2019 | 変化 | |
打球速度(km/h) | 139.5 | 141.7 | +2.2 |
打球角度(度) | 11.1 | 12.2 | +1.1 |
新たなホームランのトレンド
この上記の数値の違いは僅かに見えるかもしれないが、飛距離に換算すると約7メートルも伸びる。この飛距離の底上げこそが史上最多のホームラン数に繋がった要因なのだ。そしてこのホームラン量産時代に新たな『逆方向革命』という動きが出始めている。MLB公式アナリストのデビッド・アドラーはこう指摘する。
アドラー 興味深いのは逆方向へのホームランがスタットキャスト史上最多ということです。それを知った時は驚きましたね。
2018年までは全体の12%前後だった逆方向へのホームランが、今年は16.1%にまでなっている。
逆方向へのホームラン割合
2015年 12.5%
2016年 12.5%
2017年 13.4%
2018年 12.1%
2019年 16.1%
2016年 12.5%
2017年 13.4%
2018年 12.1%
2019年 16.1%
アドラー 近年、バッターはホームランを打つために引っ張って強いフライを打とうとしていました。それに対し、ピッチャーはそうさせないような投球を心掛けています。
アドラーがその例として挙げるのがアウトコースへの変化球の多さだ。バッターから遠いところに投げ込んで引っ張らせないようにする。その攻め方に対応したのが2019年シーズンにホームラン41本を放ったアクーニャJr.である。彼は2018年シーズンに外角の変化球に苦しみ、それをホームランにしたのはたったの2本。それが2019年は8本まで増えたのだ。(データスタジアム調べ)
アクーニャJr.の外角の変化球をホームランにした打球方向のほとんどがセンターから逆方向、外角の変化球を克服がホームラン増加に繋がった。更にヤンキースのルメイヒュー(2019年26HR)はもうひとつの要因を挙げる。
逆方向ホームランの要因を語るルメイヒュー
ルメイヒュー 球速が関係している可能性はあると思う。150キロ台の速球が増えてるからね。単なる予想ではあるけど、それが逆方向へのホームランが増えている原因かもしれないね。
フライボール対策の外角の変化球対策に対応することで引っ張らずに逆方向へのホームランが多く生まれるようになった。そしてこの逆方向へのバッティングが新たな打撃戦略を生んだ。
守備シフト破りの打撃
メジャーでは近年、シフトを敷く割合が2017年に12.1%、2018年に17.4%、2019年に25.6%(出典:Baseball Savant)と年々増加している。これを逆方向へのバッティングで破ろうという動きが出てきている。その効果を派手に見せてくれたのが9月10日のアスレチックス(vs.アストロズ)だ。その試合の初回にシフトを敷くアストロズに対してアスレチックスは徹底してその逆を突く。8本の安打中6本が逆方向へのシングルヒットだった。アスレチックスはヒットを積み重ね、初回に一挙7点を先制。試合後、アスレチックスのメルビン監督は「選手たちに逆方向を意識して守備の穴を突くように指示していた」と狙い通りだったことを明言。シフト崩しを成功させこの試合でトータル21得点した。次々を変わる打者を抑える戦略。バッターは生き残りをかけて対応を探っていく。ヤンキースのアーロン・ジャッジはその戦略を語ります。
生き残り戦略を語るA・ジャッジ
ジャッジ 最近は守備シフトが使われるから、内野ゴロの99%はアウトになる。バッターは生き残りをかけて打撃を修正しているんだ。ピッチャーもバッターも常に修正を続けているん。野球とはいたちごっこの連続。ただ、個人的には楽しみながらやっているけどね。
以上です。
いたちごっこの連続で逆方向の打撃まで辿り着いた。