2020年12月14日にフジテレビONEで放送された『プロ野球ニュース2020』で千葉ロッテマリーンズの井口資仁監督と高木豊が対談しています。
もくじ
緩い質問から
高木 よろしくお願いします。
井口 はい。お願いします。
高木 まず緩い質問から。シーズンを終えて休めてますか?
井口 休めてますね。まあ残念ながら2位という結果でしたけど、本当に選手たちが頑張ってくれたんで。
高木 うんうん。これは「くっそ~」なのか「まあ仕方ない 良くやった」なのか、どっち?
井口 両方ありますね。一時はホークスの尻尾を掴みかけたところまでいって、そこから10ゲーム以上離された悔しさもありますし。そこまでにはシーズンに色んなことがありましたんで、その中でよく頑張ってくれたなって思います。
高木 なるほど。
日本シリーズの感想
高木 もちろん日本シリーズはご覧になったと思うんですが、感想はどうですか?
井口 うん。やはり総合的にホークスが圧倒的に強いなという印象ですね。特に投手陣ですよね。
高木 うん。
井口 やっぱり特にホークスとやるときは2点3点の勝負になるんで。そこで取れるか取れないかで。今回の日本シリーズを見ても、あの投手陣からはなかなか点を取れないなという感想ですね。
高木 うんうん。
春先好調時の展望
高木 春先に楽天と開幕ダッシュで飛び出したよね。
井口 はい。
高木 ソフトバンクがちょっと低迷をしていて。そのパ・リーグの構図をどう見ていた?必ずホークスは来ると思ってた?
井口 そうですね。あそこは必ず最後に上がってくるのは分かってたんで。開幕直後はデスパイネとグラシアルがいないというのもあったんで、彼らが帰って来たらチームとして上昇するのは分かってたいたんで。
09月 11勝13敗
10月 22勝4敗1分
11月 3勝2敗
井口 そこまでに引き離したいというのはあったんですけど、うちのチーム事情もなかなか。当初予定していた先発の西野と種市が離脱して、途中でジャクソンもいなくなり。
高木 そうだねぇ。
井口 ちょっと苦しかったですね。
対ソフトバンク
高木 ロッテはソフトバンクに勝ち越してるよね。
井口 そうですね。2年連続で勝ち越してますね。
2020年 12勝11敗1分
高木 例えば他の球団とやる時とソフトバンクとの試合というは変えてるところはある?
井口 うーん。特にはないですけど、うちの投手でいえば特にインコース攻めをするようにはしてる印象はありますね。とにかく単打ならOKという攻め方をしてるというのは、この2年間ベンチにいて、そこはバッテリーが徹底しているなというのはあります。
コロナ禍の衝撃と若手の台頭
高木 優勝争いをしている10月にコロナに感染した選手が出たよね。どういう心境だった?
井口 まあ、やっぱり10人の選手が入れ替わるとチームとしてなかなか回らないところがありましたし、「自分ももしかしたらこの後に感染するんじゃないか」という、みんなが精神的に追い詰められたところとチームが勝てないという両方で、かなり選手たちのメンタルがやられてたかなとは思いますね。
高木 その時に監督として選手に伝えた言葉は何かある?
井口 ここまで選手たちが頑張って2位という位置にいましたので「これは君たちの結果だし、俺は下を見てやってないよ」というのはずっと伝えてました。
高木 なるほどね。ただ、その副産物と言ったら何だけど、藤原とかスゴく活きのいい若手が出て来た。あれは監督としたら大きな嬉しい誤算だった?
井口 嬉しい誤算ですね。
高木 うんうん。
井口 去年は安田を1年間ファームでしっかりと試合に出場させて、もうファームでやることないっていう形で今年は1軍に上げたんで。藤原もそういう形でしっかりとファームで教育してあげようというプランの中で今回こういうことがあったんで。そのプランの中で藤原が成長してくれていたなと思いますね。
高木 なるほど。
クライマックスを振り返る
高木 クライマックスを改めて振り返ると、どういう感想ですか?
11月15日 4-6
井口 うーん。そうですね・・・やっぱり打つべき人が打たないと勝てないなと。
高木 うんうん。
井口 井上中村とこの辺りの中軸がシーズン後半から調子を上げれなかったことがありますよね。
中村 打率.249 本塁打8 打点49
井口 この辺りがもう少し打てばもうちょっとやれたかなと思いますけど、なかなかホークスの投手陣には出来なかったかなと思います。
高木 まあ、なかなか出来ないよね。あの投手陣にはね。
井口 そうですね。
高木 でもやらなきゃいけないんだけどね。
井口 そうなんですよね。それとやはり足も絡めた攻撃をしたいんですけど、キャッチャー甲斐というのもあって。
高木 そうだよね。
井口 やっぱりもう少しチームバッティングも含めて仕掛けていかないとホークスには勝てないのかなと改めて感じました。
得点圏打率
ここから数字にまつわる質問がたまに出てきます。
高木 .235という数字があるんですが、これは何か分かりますか?
井口 はい。これはチーム打率ですね。
高木 この数字でよく戦えましたね。
井口 まあ、この低い打率の中でフォアボールを取れたというのが今年の2位に繋がったかなと。
本塁打 90
打点 435
盗塁 87
四球 491(12球団最多)
犠打 96(12球団最多)
得点圏 .230(12球団ワースト)
井口 決して「フォアボールを取れ」と指示しているわけではないんですけど、なかなか手を出すのが遅いバッターが多い中で何とか2ストライクから粘れたかなと。1イニングに40球投げさせた時もありますし。
高木 うんうん。
井口 そういう風にしながら何とか2位になれたんですけど、まあチーム打率をもう少し上げないといけないと思います。
高木 監督の野球っていうのはどういう野球を目指してるんですか?
井口 基本的には1番から9番まで固定メンバーでいきたいです。今年は打順を毎日毎日イジってたんで。相手投手を見てスタメンを変えていきながらって感じで。
高木 うんうん。
井口 最後のミーティングでも「個々の力をもう少し上げないとチームとして強くならないよ」という話をしたんで。ここを何とか2割5分にでも近付けられるようになればもっともっと得点力が上がると思います。
高木 その中でフォアボールはけっこう取ってるんですよねぇ。
井口 そうですね。犠打も多いですよね。得点圏には送ってるんですけど、そこからなかなか1本が出ないという。
高木 得点圏も最下位です。
井口 はい。知ってます(笑)
高木 やっぱりそこら辺を上げていかないと。
井口 はい。もう秋のキャンプで各担当のコーチに指示して、選手には数字を見せて、何が足りないのかと。
高木 うん。
井口 ランナー3塁での得点圏の三振率っていうのもナンバーワンだったので。そこを何とかして、甘い球を初球から手を出していけるように準備です。
来季の構想
高木 安田の4番とか藤原の1番とか、来季の打順というのはある程度は頭の中にあるの?
井口 今のところは想定しながら、もう2人ぐらい若手選手で上がってこれそうな選手がいるんで。
高木 うんうん。
井口 まあ、彼らをキャンプから上手く当てはめていけたらなと思います。
高木 1番と4番は決まってんの?
井口 1番は荻野もいますし。
高木 まあそうだね。
井口 1番2番で荻野と藤原が何とか機能してくれれば。
高木 安田も4番でずーっと使い続けて、俺も見てて「よく我慢してるなあ」って思ったの。
(四球はチーム2位)
井口 はい(笑) それについては簡単に言えば、他に4番を打つ選手がいないというのが一番ですよね。あとは将来的には彼を何とか4番にするというプランで。
高木 うんうん。
井口 安田はフォアボールが多いんで出塁率も稼げているんで、そこがスゴく機能したんですけど、前後のバッターが不調になったら負担が安田に全部いってしまって。ただ、最後のCSで来年に本当に期待できる働きをしてくれましたんで。
高木 そうだよねぇ。
井口 まあ、彼の中でも何か一つ変えなきゃいけないっていう状況で、同級生の村上を見て、「ちょっと村上を試してみようと」と自分でやってみてあの結果が出たんで。
高木 あぁ。
井口 いいものを掴めてシーズンが終わったと思います。
高木 来年注目の選手はいますか?
井口 うーん。まだ出てきてない選手なんですけど、今年1軍で何試合か経験しましたけど、高部瑛斗という選手がイチローさんみたいなタイプの選手で。
2軍 67試合 打率.344 安打66 本塁打1 打点16
高木 ほー。
井口 足、打つ、守ると3拍子揃ってるんで上で使ってみたんですけど、今年は結果が出なかったんで、彼に色んな話をしながら。「来年勝負だぞ」と話もしてるんで。
高木 なるほど。
先発陣
高木 チーム成績で40という数字があります。これは何の数字か分かりますか?
井口 40・・・何でしょうね?
高木 これは誰に聞いても分からないと思うんですけども。
井口 はい。
高木 これは先発5人で40勝したということ。
二木 9勝3敗 防御率3.40
石川 7勝6敗 防御率4.25
小島 7勝8敗 防御率3.73
岩下 7勝7敗 防御率4.20
高木 ちなみにソフトバンクは45勝ぐらいしてる。
井口 あぁ。
高木 でも先発陣はよく頑張ったなっていう数字なんですけど。
井口 そうですね。今年は後ろがある程度しっかりしていたんで、先発が5回6回までっていうところを投げてくれたんで。そういう意味では先発ローテの役割を1年間キッチリと回ってくれた選手が多かったですし。先発に関しては来年にも期待したいですね。
注目の佐々木朗希について
高木 来年ピッチャー陣に1枚加わってもらいたい佐々木朗希がいますが、現状はどうですか?
井口 今年はなかなか調子が上がらずに波がありましたし。
高木 うんうん。
井口 その中で体格的には二回りぐらい大きくなって。
高木 あっ、そうですか。
井口 はい。本当にユニフォームがパツパツになるぐらいに鍛えましたし。
高木 へぇー。
井口 そういう意味では来年は、今年1年間の分も含めてやってくれるんじゃないかと。
高木 でも今年なんとかデビューさせたいと思ったでしょ?
井口 うーん。そうですね。ピッチングコーチと話しながら、何とか今年中に一度は1軍で投げさせたいという思いはあったんですけど、ただ100%じゃないと投げさせないという話はずっとしてましたんで、そこまではまだ来れなかったなと。
高木 我慢しましたよねぇ。
井口 まあ、でもファンの皆さんも本当に期待してると思いますし、いい形でデビューさせたいなとは思ってます。
守備について
高木 では、次いきます。『53』という数字は何を示してるか分かりますか?
井口 53・・・。
高木 これはね、阪神からしたら羨ましいところ。
井口 何ですか??
高木 これはエラーの数なんです。
井口 あっ、エラーの数ですか。
高木 これはリーグ最小なんです。
2位 ソフト 57
3位 オリ 60
4位 楽天 61
5位 西武 69
6位 日ハム 75
高木 守備については徹底されてます?
井口 そうですね。鳥越ヘッドが日頃からやってくれたというのはあります。ただ、後半にかなりバタバタっと数が増えてしまったのが僕の中には印象があるんで。
高木 うんうん。
井口 シーズン途中まではずっと少なかったというイメージもあるんですけど、後半に優勝を争う緊迫したゲームをしたことがない選手にボロが出てしまった。だからこれはもっともっと減らせると思います。
高木 監督としたら守れるチームか打てるチーム、どちらを信頼できます?
井口 理想は両方ですよね(笑)
高木 まあ、そうだけどね(笑)
井口 まあ、やはり打たないと勝てないし守れないと勝てないですしね。ただ、守りっていうのは一番大事だと思いますし、点を取られなければ勝てるんで。
高木 うんうん。
井口 僕はまず守りからと思って、チーム作りを始めたところはあるんで。
高木 だから打てなくてもいいから守りだけは徹底して鍛えるということですかね。
井口 はい。そういった中で投手の整備だったり色々して、今年は当初かなり成績が良かったですしね。
高木 うんうん。じゃあ、チーム作りとしては順調に来てますね。
井口 そうですね。今のところは順調に階段を上がってるかなと思います。
監督業について
高木 じゃあ、最後の質問。監督になって1年毎に順位を上げています。
2019年 4位
2020年 2位(CS出場)
高木 今話をされたようにチーム作りが順調に来てる、選手も育ってきてる。
井口 はい。
高木 あと残されたものっていうのは何ですか?
井口 僕は2019年にCSを逃した時点で感じたことは、我々も含めての経験不足かなと。
高木 うん。
井口 それで今年は優勝争いをして、そこで敗れましたけど、この経験というのは更にまた来年に優勝争いしたときに生きてくると思いますし。僕が監督になった時から経験値がなければ優勝できないと考えていたんですね。
高木 うん。
井口 この2019年と2020年の2年間でCS争いをして、ましてや今年はCSに出れた。これは本当に大きかったと思いますし、来年は本当にいけるんじゃないかとみんな感じたと思うんで。
高木 監督をやって、学んだことはあります?
井口 はい。僕は我慢だと思ってます。
高木 うーん。
井口 直接選手に言いたい事っていっぱいあるんですけど、僕は必ず担当コーチを介して伝えますし、あとは伝え方ですね。
高木 うんうん。
井口 我々の時代はガーンっと怒られた時代ですけど。
高木 そうだよね。
井口 今はそうやって言うと怯んでしまう選手が多いので。本当に選手には意見を聞きながら、うまくアプローチするようにしてます。
高木 やっぱり監督に一番大事なことは忍耐であると。
井口 そうですね。忍耐とあまり表情に出さないようにしてるんで。
高木 出さないよね。本当に出さない。
井口 今年はマスクが本当にありがたいです(笑)
高木 あぁ、そうなんだね(笑)
井口 はい(笑)
高木 ただ目力(めぢから)があるから分かってしまうんだよね(笑)
井口 そうですね(笑) まあ、やっぱり監督の表情をみんな窺うんですよね。失敗した時とか。
高木 うんうん。
井口 そういうので選手に尾を引かないようにしてもらうために我慢が一番じゃないですかね。
高木 なるほどね。
井口 本当に段々と眉間にシワが出てくるようになったんで(笑)
2021年シーズンへ向けて
高木 もうそれしかないよね。
井口 しっかりと段階を経て、みんな成長してきてくれてますので、もうここだと思います。
高木 なるほど。
井口 来年は本当に最後の最後に優勝掴み取るところまで来てると思いますので、何とか一丸となって。ここまで届く位置まで来たかなと自分自身も実感してるんで。あとは自分自身ももっともっと勉強しながら、選手と一緒に頑張れたらなと思います。
高木 期待してます。ありがとうございました。
井口 ありがとうございました。
以上です。