2022年1月22日にBS1で放送された『球辞苑』でメジャーリーグ通のAKI猪瀬が『ツーシーム』について語っています。

 

ツーシームについて

猪瀬 ツーシームはMLBの世界では至って普通の球種なので、非常に取り上げやすい話題だと思います。

 

その言葉通り、2021年の球種別投球割合はMLBではNPBのおよそ2倍。フォーシーム、スライダーに次ぐ投球割合で投球頻度の高い球種と言える。

 

 

ツーシームはいつ生まれたのか?

猪瀬 おそらく1950年代から、こういうボールが存在すると言われていたので。これは古くからMLBでは認知されていた変化球の一つだと思います。根底にあるのは、MLBの場合は「速く強いボールを投げるのがベストである」というのがベースにあるので、おそらく創成期から「このグリップの方がいいボールがいく」と思っていたピッチャーが自然とツーシームを投げていたという感覚だと思います。

 

ツーシームは古くから速球と認識され、より速くより強いボールを求める中で自然発生的に生まれた球種だと言う。

 

ツーシームに光が当たるようになったのは?

猪瀬 やっばり80年代から90年代にかけて、『精密機械』と呼ばれていたグレッグ・マダックスというピッチャーがツーシームを非常に効果的に使って、いい成績を残していたんで、そのぐらいからツーシームにスポットライトが当たるようになってきた。

 

グレッグマダックス
『精密機械』と呼ばれたレジェンドはツーシームをボールゾーンからストライクに入れる巧妙な投球術でその威力を知らしめた。

 

猪瀬 そしてこの時代性とリンクするのが、やはり80年代以降になってくると、先発ピッチャーの球数制限や分業制が確立していった時代背景があるんで、そこが上手くリンクしている。その答えというのは球数制限があると、三振を取るピッチャーよりは1球で1つのアウトを取れるという方が長いイニングを消化できるというので、時代にも後押しされるような形で80年代から90年代に一気にツーシームがメジャーな変化球になっていったという事だと思います。

 

バットの芯を外すツーシームは1球でゴロアウトを取れる効率のいい変化球。

 

 

逆にツーシームのデメリットとは

猪瀬 今、メジャーリーグはシフト全盛の時代もあるんで、ツーシームを投げるピッチャーが打たせた、ゴロになった、アウトだなと思ってもそこに野手がいなかったら、それがヒットになってしまうので、これは日米の共通点なんですけど、多少ツーシームというのは被打率が高めに出てしまう。

 

事実、2021年シーズンの球種別被打率を見ると、ツーシームはMLBで2割8分1厘で日本同様に最も打たれやすい球種という側面も持ち合わせている。

 

 

 

現在、どのようなピッチャーが効果的にツーシームを使っているのか

猪瀬 2021年にツーシームを最も多く使ったピッチャーが大ベテランのアダムウェインライト。現役でいうとウェインライトが一番のツーシームの使い手になるんだと思います。

 

アダムウェインライト
2メートルの長身から繰り出すコントロール抜群のツーシームでバッターを翻弄する。2021年のツーシーム被打率は1割7分5厘。40歳にしてメジャーナンバーワンの数字をマーク。

 

猪瀬 制球力を大切にする球種なので、マダックスに代表されるように、そんなに速いボールを投げるピッチャーが扱う球種ではありませんでした。ただ、ここに来て新たなツーシームの時代に入ってきたなと思うのが、速いツーシームをとにかく投げるというピッチャーがここ2~3年でドンドン出てきてます。

 

(続けて)

 

猪瀬 例えばドジャースのブルズダー・グラテロルはツーシームが160キロ超え、そしてフォーシームが155キロでツーシームの方が平均球速が速い。速いツーシームというものがここ2~3年から今後2~3年がMLBの中で大きなトレンドになっていくのかなという感じはします。

 

ツーシーム高速化の背景にあるもの

猪瀬 やっばりフライボールレボリューションという、とにかく角度を付けて打ち上げるというもの。ピッチャー側としては高めのフォーシーム、もしくは縦に大きく割れてくるカーブ、この2球種をうまく使えばフライを打ちにくいというのがデータで出てるんですが、その中で高め1にボールやカーブを投げられないピッチャーはどうしたものかと考えてみると、ツーシームがとても大切な球種だと思います。

 

 

以上です。

高速ツーシームは日本でもトレンドになるかも。
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