2019年5月17日にBS1で放送された『ワースポ×MLB』で2019年シーズン序盤、三振が増加している投手についてMLB公式アナリストのデビッド・アドラーさんが分析しています。このVTRが終わったあとにスタジオで引き続きこのことについて黒木知宏とフリーアナウンサーの山本萩子が語っています。


アドラー 三振を劇的に増やしているアストロズのゲリット・コールの場合、ボールの回転数の変遷を見るとその理由が分かります。2017年はフォーシームの回転数は2164とメジャー平均の2219を下回っていました。ところが2018年はおよそ2400と一気に平均以上になりました。回転数が増えたことで空振りを多く取れるようになりました。
ゲリット・コールのフォーシーム空振り率 | |
2017年 | 19.8% |
2018年 | 29.7% |
アドラー 更に今年は回転数が2500を超えています。これには驚きましたよ。空振り率も先発ピッチャーの中で最も高い数値をマークしています。
先発投手 フォーシーム空振り率 | |||
1位 | HOU | コール | 35.7% |
2位 | MIA | リチャーズ | 32.2% |
3位 | MIN | オドリジー | 31.6% |
4位 | TB | スネル | 31.3% |
5位 | WSH | シャーザー | 31.2% |
アドラー アストロズの最新テクノロジーを活用したチーム戦略がこの結果を生み出しました。

アドラー タイガースのボイドは開幕1ヶ月で多くの三振を奪い、意外な活躍を見せています。彼はオフにインディアンスのトレバー・バウアーが通っているドライブラインでトレーニングにしていると話していました。彼のフォーシームの回転数は2018年の2281から今年2019年には2405に上昇しています。
ボイドのフォーシームの回転数 | |
2017年 | 2281 |
2018年 | 2405 |
アドラー 三振を奪う割合も大幅に増やしています。これは最新テクノロジーの効果だと言えるでしょう。ボールの質を細かく分析したことが良い結果に表れています。
ボイドの奪三振率 | |
2017年 | 8.40 |
2018年 | 10.77 |
アドラー ヤンキースのオタビーノも自らデータを活用して変化球に磨きをかけています。彼らのように個人でデータを活用するピッチャーは他にも大勢います。今後も増え続けるでしょう。

アドラー レイズの先発ローテーションにはサイヤング投手のスネルがいます。彼のストレートの速さは先発左腕の中でもトップクラス。(※スネルのフォーシーム平均球速153.4km/hで先発左腕ではMLB2位)
(続けて)
アドラー カーブとのコンビネーションは抜群で打つのはほぼ不可能です。同じく先発のグラスナウは今年一気にブレイクしました。彼は203センチと長身で長いリーチが武器です。プレートからリリースポイントまでの距離を示すエクステンションはメジャーで最長。(※エクステンションとは球持ちの良さだと考えてください)
先発投手 平均エクステンション | |||
1位 | TB | グラスナウ | 224.7㎝ |
2位 | MIA | ペラルタ | 211.4㎝ |
3位 | MIN | デグローム | 207.7㎝ |
アドラー 彼のフォーシームの球速は150キロ中盤ですが、リリースポイントが誰よりもバッターに近いのでより速く感じるでしょう。そしてリリーフのアルバラドもストレートは信じられないほど変化します。奪三振率13.50と多くの三振を奪っていますし、彼が出てきたらもう諦めるしかありません。このそうそうたるレイズの投手陣。それにオープナーなど革新的な戦略が結果を出しています。目が離せないチームなのでポストシーズンでも見てみたいですね。
アナ レイズのピッチャー陣はやっぱりスゴいですね。
黒木 スゴいですね。そういうピッチャーをチーム編成として使っているのであれば、当然勝率は高くなりますよね。
アナ そうですよね。そしてアストロズのコール投手はボールの回転数を大幅に上げていました。回転数を上げることって可能なんですね。
黒木 これ見ての通り上げることは可能なんですよね。
コールのフォーシームの回転数 | |
2015 | 2156回転/分 |
2016 | 2183回転/分 |
2017 | 2164回転/分 |
2018 | 2379回転/分 |
2019 | 2521回転/分 |
黒木 当然ボールを投げるための筋力もそうなんですけど、腕の位置だったり、回転軸ですよね。いかにボールに強く回転をかけられるかっていう投げ方をちゃんと分析しないと出来ないことですから。
アナ はい。
黒木 それができたアストロズのデータ戦略の凄さ。それをコールはちゃんと体でうまく表現できるということですからね。まあ本当に凄い数字ですよね。
アナ そうですよね。そしてこういった取り組みはチームレベルではなく、個人でも広がりを見せているんですね。
黒木 そうですね。バウアーにしても、タイガースのボイドにしてもシアトルのドライブラインに通って、いかに自分の球を速くするかとか、いかに回転を多くするかとか、回転軸を変えるというのをデータとして見て、それをちゃんと体現できるんですからね。凄い時代になりましたね(笑)
アナ 今後も進化していきそうですね。
黒木 進化していくでしょうね。
以上です。