2020年12月19日ににBS1で放送された『球辞苑』で南海ホークスなどで活躍した伝説のスラッガー門田博光が自身の打撃におけるスタンスについて語っています。
門田 僕がちょっと考えてきたことは足のスタンスと足を上げるスタンス。ほんでピッチャーによってクロス、スクエア、オープン。この9つを話してみようかなと思ってます。
―9つもあるの?
門田 まあ、僕だけですけどね。
―クローズドスタンスに行きついた理由
門田 はっきり言いましてね、スタンスよりも『ねじり方』ですね。僕は上背がないでしょ。みんなよりも10センチ以上低いと思うんですよ。だから『ねじって』『ねじって』回転をキツくする。それが理由ですね。クロスした方がみんなよりもキツく回れるので、飛距離は出るんじゃないかなということで。
―突き詰めた先・・・
門田 最終的にはバットの重さまで行ってしまいましたけどね。それまでは「外国人のパワーが何であんなけ違うのかなな?」って、そんな事ばっかり考えてるでしょ。そうするとバットの長さ重さで最終的に重さ1キロのバットで振った時に外国人と同じような勢いの打球が行きましたからね。そこで外国人のパワーに対する劣等感がなくなりましたね。
―1キロのバット!?
門田 はい。だからあの時代に1キロのバットを振っとる選手はいなかったと思います。
門田 スイングというのは本当に気持ち悪いくらい鳥肌が立つぐらいに変わるときがあるんですよ。「おっ、こんな音聞いたことないな」っていう。スタンスを「小で行ったらどんな音」「中で行ったらどんな音」「大で行ったらどんな音」になるかと。それでひたすら振るわけですよね。
―それでどう変わった?
門田 やっぱり40発打てるようになりましたら音が変わります。「ピシッ!」と何とも言えん、自分自身が怖くなるような音に変わります。
―打席での立つ位置
門田 まず軸足はホームベースの先っぽから半足分ほど後ろぐらいですね。
―立ち位置がピッチャー寄りの理由
門田 普通のバッターはキャッチャー寄りに立つけど、何で僕は後ろに行かなかったかというと、キャッチャー寄りに立ち過ぎると(右ピッチャー)のスライダーが物凄くえげつなく入ってくるわけですよ。そこでちょっとピッチャー寄りに立つことで曲がることがないようなストレートに近いボールに見えるということでこの位置に立っていた。
―9つのスタンスについて
門田 ホームベースのピッチャー側、左バッター側の角から何センチかで考えます。まずこんな感じですよね。少しクロスに構えてますよね。
門田 そんな中で僕がやっていたのは『小』『中』『大』っていう。スタンスの広さですよね。
『小』
『中』
『大』
門田 ピッチャーによって広さを変える。だからテレビだと同じ所に足を下ろしてるように見えるじゃないですか。でも決してそうじゃないんですよね。投球フォームは十人十色で色んな投げ方の人がおるでしょ。モーションが大きな投手とか小さな投手。このモーションが小さい投手が怖いんですよね。小さい人はタイミングが遅れてしまうんですよね。だからそういうときにはスタンスを小さくして「さあ いらっしゃい!」と待つんです。
―足の上げ方のパターンは?
門田 上げた方の足が右肘に当たるぐらい上げる(大)か、そこから中、小と3つのパターンですね。
―足の下ろし方のパターンは?
門田 ピッチャーによっては上げてからクローズドスタンスで構えていた足をそのまま下ろすときと、スクエアに下ろすときと、そして上げてるときに「シュートが来た いただき!」となって少しオープンにして打つ。だからスタンスの広さ3通り、足の上げ方3通り、足の下ろし方3通り。この9つを僕は大事にしてきた。
―もう1つの狙いとは?
門田 僕の簡単な野球哲学ではないですけど、「真ん中周辺のボールをキャッチャーに捕らせてはあいならん」という考えがある。ということは難しいコースを振ったって打てないわけですよ。じゃあ、最終的には真ん中の周辺をキャッチャーに捕らせない方が良いということで。それをやるだけで年間終わったときには3割は打てる。そこそこの力がある人なら25本のホームランは打てる。
―現在の野球界ではオープンスタンスのバッターが増えていることについて
門田 今の人はオープンスタンスにしてしまってアウトコースも打てるインコースも打てるもちろん真ん中も打てるということで、打てる視野を大きくし過ぎてるから何もかも手を出してしまうんですよ。難しいアウトコースとかをね。それは真ん中のボールに見えてるから振ってしまうんです。僕はそれについて「う~ん・・・」となってしまう。
以上です。