2022年1月8日にBS1で放送された『球辞苑』で横浜や中日で活躍したキャッチャー谷繁元信が『見逃し三振』について語っています。
―2人から絶賛された
谷繁 ハハハ(爆笑) いいですね~。これは最高の褒め言葉じゃないですかね。
―見逃し三振は狙う?
谷繁 僕は三振を取るんだったら常に見逃し三振を取りたいと思ってます。完璧にバッテリーが勝ったことの証ですから。振らせないですから。
―バットを振らせない方法
谷繁 やっぱり長打を打たれにくいのはバッターから遠く低くが基本なんですね。だからそこを意識させながら、「ここではインコースはないだろう」とバッターが考えてると僕が確信を持った場合にはインサイド勝負というのはバッターにはかなり効いてくるんで。2~3割でも「インサイドに来るかもしれない」とバッターの頭にあった時にインサイドにいって、甘くなった場合はかなり打たれる確率が高いんで。だからそこを1割切るぐらいにインサイドが消えた場合にインサイドのボールが使えるんですよね。
―バッターとの駆け引きのテクニック
谷繁 勝負球をいくときに、例えばフォークを投げる場合にキャッチャーは「低く!低く!」ってピッチャーに伝えるために言ったりジェスチャーをしたりするんですよ。あれってキャッチャーはわざとバッターに聞こえるように言ってるんですね。「ワンバウンドでいいぞ!」って言っといてストレートとか。本当に子供騙しみたいなことですけど。でも、バッターの頭の中にはその子供騙しが絶対に残るんですよ。そこで生まれるちょっとした迷いで手が出なくなることもある。だからそれは使ってました。
―見逃し三振を取りやすいピッチャーは?
谷繁 絶対的な勝負球があるピッチャーですね。だから佐々木(主浩)さんだったらフォーク、岩瀬(仁紀)ならスライダー、(川上)憲伸だったらカットボール。
(続けて)
谷繁 例えば佐々木さんだったらフォークがあります。それでフォークを意識していると、バッターはやっぱりストレートに手が出なくなる。でも、それをいつも同じようにやっていると段々と効かなくなってくるんで。だからやっぱり使いどころは常に考えてましたね。
―見逃し三振の効果
谷繁 攻撃側がちょっと流れ良く攻撃してるじゃないですか。それで1点追い越しました。でも、最後のバッターが見逃し三振を取られると流れが止まるんですよ。だから最後のバッターが見逃し三振すると攻撃から守備の流れが変わる可能性があると僕は感じていたので。逆に自分がイニングの最後のバッターのときにはなるべく見逃し三振はしたくないなと思ってました。
―審判との向き合い方
谷繁 2回あたりぐらいまでは自分のストライクゾーンというのを確認しながらスタートしていくところだと思っていたので。だからボール気味の球をストライク判定されると、「いや、今のはボールですよ」って。まあ、そのときはありがたいんですよ。ありがたいんですけど、でもそれを終盤でやられると、やっぱりどっちに転ぶか分からないゲーム展開になるので。だから最初にストライクゾーンを正しといて、審判の状態を元に戻す。お互いが正直になるように心掛けていました。
―正しく見てもらうためのキャッチングの工夫
谷繁 審判は上から見てるわけですから、そこから見えやすいようにキャッチングしようと思ってました。自分から近くで捕らない、前過ぎで捕らない、ちょうどいい角度っていう。あとはミットの手の甲の部分が絶対に下がらないように、手の甲がピッチャーの方に向かないようにしてましたね。手の甲の面が審判から見えるようにキャッチングしようと思ってました。
(続けて)
谷繁 手の甲がピッチャーに見える状態だと、どうしても審判には低く見えるんですよ。だから手の甲が見えてれば、審判に高さが「ここだ」っていうのが分かる。低めは特に手の甲を見せる事を意識していましたね。
―最後にキャッチャー・谷繁にとって見逃し三振とは?
谷繁 そうですねぇ・・・キャッチャーの醍醐味かな。そこが気持ちいいんですよ(笑) もう「どうだ!」って感じになっちゃうんです。相手をねじ伏せたみたいな。
以上です。