2018年1月にBS1で放送された『球辞苑』で阪神タイガースでサードとショート、掛布雅之と平田勝男が三遊間のコンビの強いこだわりについて語っています。

 



掛布と平田は1985年に三遊間コンビでゴールデングラブを同時受賞。1985年と言えばバース掛布岡田による強力打線が象徴する打撃で日本一になった印象が強い。しかし掛布はこう断言する。

 

掛布 皆さんは「打った打った」と言われますけど、僕は1年間守り勝ったチームだと思ってるんですよ。バース、岡田、平田、そして僕という内野陣の守る力がけっこうあったと思うんですね。改めて平田と僕が一緒にゴールデングラブを獲ったというよりも、獲って当たり前だよねっていう。

 

 

当時の阪神の練習方針

平田 それはノックの量でしょ。

 

掛布 うん。そうだよな。捕ったよなぁ。

 

平田 それで体を作っていってる典型でしたんでね。やっぱりコーチの方も妥協しなかったですね。

 

掛布 しなかったねぇ。

 

平田 やめないんですから。

 

掛布 ゲーム前にノック1時間ですよ。

 

スタッフ ゲーム前?

 

掛布 うん。ドロドロですもん。バッティングは3球ぐらいですよ。

 

平田 ハハハ(笑) それぐらい受けるから球際の強さだとか、身のこなしとか、判断っていうのが出来るようになるんでね。

 

 

三遊間で一番大事なこと

平田 二遊間は練習をやるじゃないですか。三遊間の連係ってないだけに『あうんの呼吸』っていう。僕は三遊間のあうんの呼吸っていうのは非常に大事だと思います。

 

掛布 そうだね。

 

平田 練習はそんなにしないだけにあうんの呼吸がないと。「ここまで来て捕ってくださいよ」っていう。

 

掛布 うんうん。

 

平田 「いや、ここは平田が捕るだろう」っていうね。来てほしくない時もあるしね。

 

掛布 あるんだよな。

 

 

三遊間に不可欠なのはあうんの呼吸。そのため二人はグラウンド以外でも多くの時間を一緒に過ごしたと言う。

 

 

掛布 日頃、平田を一緒に連れて食事をしたり、お酒を飲んだりしてましたので。一緒にいて彼の性格も含めて丸裸じゃないですけど、見える部分がありますので。そういう中でやっぱり最後は野球の話になるんですよ。「ああだったな こうだったな こうしたらいいんじゃないか」と。

 

平田 そうすると大体、掛布さんのプレースタイルが分かりますんでね。

 

 

二人の三遊間での強いこだわり

平田 例えば当時は大島康徳さんとか、宇野勝さんとか、山本浩二さんとか、引っ張るバッターのときに三遊間を絶対に抜かせないように。

 

掛布 そうそう。

 

平田 だから、スゴく深く守ってたというね。

 

掛布 そうなんですよ。だから平田に「ゴロでは三遊間を抜かせないぞ」って言ってました。

 

平田 おっしゃってましたね。

 

掛布 相手の中心バッター、右バッターであれば三遊間が一番のヒットゾーンなんですよ。そこを止められるというのは守備をしながら、相手のベンチに対して攻撃している野球のリズムができますよね。

 

攻撃的な守備の意識。相手チームの主力が放つ三遊間への打球を封じ込めれば試合の流れを自分たちに大きく引き込める。この教えを説いたのが現役時代に『牛若丸』と呼ばれ、史上最高の名手とも評された遊撃手のレジェンド。当時の阪神の監督を務めていた吉田義男だった。

 

掛布 吉田義男さんが監督になられた時に「野球というスポーツは攻撃しているときに攻撃じゃないんだ。守っている時に相手のベンチやバッターを攻撃できる野球のリズムが最大の攻撃だ」と言うんですよ。そういう部分に僕らはスゴくこだわっていた部分があるのかもしれません。

 

 

二人が意識した相手を圧倒する三遊間の守備とは

平田 ある程度の体勢が悪くて、ちょっとしたらワンバウンド送球なんてね。ちょっとそういう考えじゃなかったんですよ。

 

掛布 そうじゃないんですよ。

 

平田 やっぱりノーバウンドの送球が醍醐味じゃないですか。

 

掛布 ファーストに矢のようなボールを投げて相手の4番バッターをファーストベースまでの半分ぐらいでアウトにしちゃうとかね。そういう強さを見せる三遊間というのはスゴく大切だと思います。

 

 

もう一つのこだわり

平田 ゴロはもちろんですけど、フライですね。フライは「掛布さん、サードの後ろはお願いしますよ」、「任せとけ」って。全部サードの後ろとかショートのところも捕ってもらって。これもあうんの呼吸なんですよ。

 

掛布 その辺りは分かり合ってんだよな。

 

スタッフ 今だとサードの後方はショートが捕りますよね?

 

平田 そうだね。今、僕らもコーチになったらそう言うんだけど、要は上手い人が捕ってアウトにすればいいことなんで。

 

掛布 だから僕はアルプス席ぐらいまで行ってましたよ。

 

平田 レフトが佐野仙好と長崎慶一さんでね(笑)

 

掛布 動かないですから(笑)

 

 

やがて三遊間コンビ解消の時がおとずれる

掛布 僕自身も辞める辞めないとなった時に、平田も出たり出なかったりの時代がありましたので、そこでショートを誰に守らせる、ファーストを誰に守らせる、サードを誰に守らせるとなって。

 

平田 それで僕がファーストでスタメンと言われた時に。

 

掛布 「いや、ダメだ。お前がファーストはいかん 違うよ」って。

 

平田 それは違うだろと言われまして。

 

掛布 ただね、平田が「いや、そんなこと言わないでください」って。

 

平田 もうやめてくださいって言って、僕はファーストを守りましたもん。

 

掛布 それは何故かと言うと、平田はみんなから認められたショートですから。そのショートでミスをすることがやっぱり怖いわけですよね。

 

平田 はい。

 

掛布 守り続けた人間ってそのポジションに愛着があるけど、やっぱり怖い場所でもあるんですよ。だから大切にしたんだと思います。

 

平田 その通りですね。ミスして「あいつもショート落ちたな」って思われることがね、スゴいショックというか。

 

掛布 それぐらい野球選手って怖さっていうのが常に背中にあるんですよね。

 

 

以上です。

強いこだわりを聞けました。

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