2018年10月18日にABCラジオで放送された「ラジオノオト」で新たに阪神タイガースの監督に就任した矢野燿大が色々と語っています。聞き手はABCアナウンサーの伊藤史隆。
アナ 来年のチームの指揮を執るということになります。正直、今チームは最下位ですので手を付けないといけないことがいっぱいありますよね。
矢野 はい。
アナ ベテラン選手がどう動くのか、一方で若手選手をどう使って育成するのか。矢野さんのプランはどうですか?
矢野 うーん。今、ベテランの選手たちは、鳥谷は今年苦しみましたけど、パフォーマンスとしてははまだ必要な部分を出してくれていますから。
アナ はい。
矢野 特別扱いはある程度しますけど、でも競争の中でやっていって、競争に勝った奴を使うべきかなと。それが一番フラットだと。
アナ 敢えて伺いますけど、糸井選手や福留選手が春先に調子が上がらなければ、これは若手を使っていこうというのも否定しないという。
矢野 そうですね。だから、それだけのものを見せてくれて、現状のチームのことを考えたり、1年間を考えた場合にそれがプラスになるという考えが僕の中にあれば、そういう事もあり得ると思います。
アナ そういう考えがベースの上で矢野さんが目指す理想の野球というのはどうですか?
矢野 これはね、スゴく、説明が難しいんですけど、究極は僕が何もしない野球が理想です。監督が何もしない。選手が勝手にやる。これスゴく語弊がありますけど、選手のせいにするとか、選手任せにするための何もしないということではないです。
アナ はい。
矢野 選手自身がこの状況だからこうやってやるんだと。例えばノーアウト2塁で普通なら進塁打を打つことがセオリーですけど、『いやいや、俺はランナーを還すよ』と。配球も左バッターだったら引っ張らせないように、右バッターだったら逆方向に打たせないような配球をしてくるんだったら、逆に左バッターだったらおっつけて打ったり、右バッターだったら引っ張ったり、という考えを持っていいと思うんですよ。
アナ はい。
矢野 だから、やらされるんじゃなくて、自分たちがチームのためにやる、自己アピールするためにやるという野球をしっかりと身に付けていってくれて、やるっていう方がやらされているのと、自分からやるとのとでは全然違うと思っていて。
アナ はい。
矢野 それは2軍監督でも体験していたんですね。だから、途中でサインを出さずに自分で考えてやってこいと。ただ結果に対して俺は文句を言わないと。ただお前がどうしたいかを教えてくれと。この状況ではどうしたかったのか。その考えを発言させて、じゃあこうやって練習していこうよというスタンスでやっていたんです。じゃあ、例えばノーアウト2塁でセカンドゴロを打って進塁打を打ちました。そのバッターの達成感というはサインで打たされたのと自分で考えてやったのとでは全然違うと思うんですよ。
アナ はい。
矢野 自分で打ちにいったセカンドゴロの方が価値があるんです。やりがいがあるんですよ。そういうのはトータルすると、植え付けて、僕らも指導する部分は指導しないといけないんですけど、選手たちがこの場面で何が必要かというのを考えて、僕が何もしないで考えてやってくれるというのが理想だなというのを今年1年間、2軍監督をやって感じました。
アナ 矢野さんが現役時代を経験した中日と阪神で、そんなふうに感じたチームというのはありましたか?
矢野 うーん。2005年の日本シリーズで戦ったロッテはそんなイメージですかね。何か選手たちが自由に動いて、俺はこうやりたい、剛はこうやりたい、今江はこうやりたい。そういうものがチームにあったように思います。
アナ あのチームって失礼な言い方ですがタイトルホルダーがバンバンいるようなチームじゃなかったんですが、戦いの中で本当に強かったですもんね。
矢野 やっていてイヤでしたもんね。
アナ うん。
矢野 やっぱりそういう何をするんだろうと、言い方が悪いですけど、レールの上に乗っているような戦い方じゃなくて、こういうところでこんなことをしたんか、とか。
アナ はい。
矢野 なんてことをするねんということがあってもいいと思うんですよね。
ここから金本前監督について
アナ 矢野さんに色々とお話を聞いてるんですけど、もう一つだけ聞きたいことがあります。
矢野 どうぞ。
アナ 金本知憲さんという、もう学生の頃から一緒に汗を流してきて、その金本さんの下でコーチや2軍監督をしてこられて、金本監督が辞められてそれを矢野さんが引き継ぐことになったんですけど、その経緯の中で金本さんへの思いは色々とあると思います。金本さんとは色々とお話はされたんですか?
矢野 はい。もちろん。
アナ 聞かせて頂ける範囲でいいので、どうですか?
矢野 うーん。(3秒ほど沈黙) まあ、本当はあんまり言いたくないんですけど。うーん。(3秒ほど沈黙) まあ、僕の中にも自分自身がズルいなと思う部分もあるんですよ。というのは今年1年、1軍を離れて2軍監督としてやっていただけで、今年の1軍の成績に関しては僕にも責任があるんです。
アナ はい。
矢野 なのに、この様な形になったことに引っ掛かりもありましたし。まあでも、それ以外のことは僕の心の中に留めておきたいんですけど。
アナ はい。
矢野 2人で話せたというのは僕の背中を押してくれたというか、金本監督も僕の背中を押してくれたんで、今回受けるということになりましたね。
アナ それで十分です。
以上です。
目指す野球のところは理想ですからね。こういうので風呂敷を広げすぎると後でゴチャゴチャ言う奴らがいたりします。