2019年12月16日にBS1で放送された『プロ野球ニュース2019』でノーヒットノーランを達成した中日ドラゴンズの大野雄大と福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大が対談しています。聞き手は野村弘樹。
もくじ
2019年シーズンの振り返り
野村 改めてお二人、ノーヒットノーヒットおめでとうございます。
大野・千賀 ありがとうございます。
野村 今年はやはりかなり飛躍したシーズンたったと思うんだけど、振り返っていかがですか?
千賀 インパクトの残ることもできましたし、チームとして日本一になれたので、スゴく濃い1年だったかなと思います。
奪三振率11.33は歴代1位
9/6 史上80人目のノーヒットノーラン達成
大野 まさか自分がノーヒットノーランできるとは思ってなかったですし、あとは去年が0勝ということで、それを考えると出来すぎなシーズンだと思いますね。
2018年0勝の屈辱から復活し初タイトル
9/14 史上81人目のノーヒットノーラン達成
野村 今年は何か変えたとか、取り組んだことはあります?
大野 球速は去年も150キロぐらい出てましたし、ストレートはそこそこ良かったんですけど。それを操るメンタル面が。
野村 うん。メンタル強そうじゃん(笑)
大野 強いフリをしてたんで(笑) 実は全然強くなくて(笑)
野村 ハハハ(笑)
お互いの印象
大野 最初に会った時の千賀投手はまだ育成選手だったんですけど、なんせ球が速くて。これ中日におったら間違いなく支配下やなというかローテーションピッチャーやなって思ってたんですけど。
野村 なるほど。
大野 そうしたら月の年ぐらいに支配下登録されて、そっからグングンですよね。
野村 グングンきてるよね(笑)
大野 はい。
野村 千賀投手から見た大野投手の印象というのは?
千賀 ドラゴンズのドラフト1位の選手ということで、どういう人なのかなと思って楽しみにしていたんですけど。
野村 うん。
千賀 スゴい球を放ってるんですけど、たまにちょっと(一緒に自主トレに参加していた)吉見さんにボソッと言われたりとかして。
野村・大野 ハハハ(笑)
千賀 ちょっと態度の事とかですかね?
大野 まあ僕は性格が性格なんで、ちょっとちゃらんぽらんなんで。練習中もちょっと抜いたりすると「オイ」と。
野村 なるほど(笑)
千賀 第一印象はそんな感じでした。
ノーヒットノーラン達成試合を解説
野村 大野選手から選んでください。
大野 では、まずはど真ん中が好きなんで5番から。
野村 では、千賀選手から。まずこの試合では調子はやっぱり良かったですか?
千賀 良くなかったですね。悪いときって思い切り投げないといい球がいかないで。それでずっと良くなくて、いつもだったらそこを力んでいきがちなところをそこを敢えてスーっと入ったことが最初良かったかなと思います。
野村 なるほど。それで最終回にちょっと試合展開がもつれたじゃないですか。
千賀 はい。
野村 やっぱりかなり意識しました?
千賀 僕自身が3連敗中だったので、もう2対0で。もちろんノーヒットというの分かっていましたけど、ランナー1人出してホームラン、そして上位に回るとかだったので。
野村 うんうん。
千賀 これでホームランを打たれたら本当に笑えないなと思って。それだけを考えて大事にいったという感じですね。
野村 うーん。まあ終わったときは最高に嬉しかったよね?
千賀 そうですね。「こんな事ができるんだ」と思いました。
野村 そして大野選手。大野選手はこの試合では調子はどうでした?
大野 僕も体調的には良くなかったですよ。
野村 ほぉー。
大野 僕はもともとデーゲームがあんま好きじゃないというか、ちょっと早起きになるんで(笑)
野村 そうだね(笑)
大野 この日はそれに加えていつも起きる時間よりも娘に早く起こされて。それで「眠たい眠たい」と言いながら球場入りしてのマウンドでした。
野村 なるほど。でもこの試合ではファインプレーもあったしね。それと達成の瞬間の喜びのジャンプの仕方を改めて自分で見てどうです?
大野 ヒドイっすね(笑)
千賀 ハハハ(笑)
野村 それでお互いがノーヒットノーランをやって連絡は取り合っていたの?
大野 僕は千賀投手が達成する瞬間もナゴヤドームのロッカーのテレビで見てたんですよ。
野村 はい。
大野 ほんまにスゴいなあと思って。まあそこで連絡はしなかったですね。僕ごときがと思ったんで(笑)
野村 なるほど(笑)
千賀 僕は移動中に速報で、大野さんがノーヒット継続中って出て。
野村 はいはい。
千賀 近っと思って。とりあえず最初に(笑)
野村 あのいい加減な大野さんが?(笑)
千賀 はい(笑) でも今年はスゴくいい状態で投げられていたと思うんで。「おめでとうございます。僕がやってから近すぎますよ」と送りました。
野村 うん。ほぼ同時と言ってもいいもんね。1週間後ぐらいで。
千賀 そうですね。すぐできちゃう記録みたいなね(笑)
大野 申し訳ないなと。僕が達成した更に1週間以内ぐらいにジャイアンツの左の高橋優貴くんが(9/18の)ナゴヤドームで6回までノーヒットノーランやっていました。
野村 あぁ、やってたな。
大野 それで、「やんなよ」と思って(笑)
一同 ハハハ(笑)
大野 千賀投手の気持ちが分かりました。
千賀 近いことの意味が分かりましたか。
大野 うん。やっぱりちょっと薄れちゃうんですよね。
野村 なるほどね。
大野 やったということを皆さんに覚えていてほしいんで。「高橋くん、まだ早い!」と。
野村 なるほど(笑)
日本代表 東京五輪への気持ち
大野 日本でオリンピックがあって、しかも野球が復活して、そして自分が現役というのは本当にこんなラッキーな事はないと。
野村 うん。
大野 そこの中に選ばれるようにまずは2020年シーズンですね。開幕からいいスタートダッシュを決めれるように頑張っていきたいと思います。
野村 千賀投手は?
千賀 やっぱりいいスタートを切って、千賀はいい球を放ってると。しっかりと日の丸を背負わせても大丈夫だと周りの人から評価していただける準備はしていきます。
野村 なるほど。
千賀 やっぱり日の丸という面では、前回のWBCでは僕が唯一の負け投手なんでそこは思っていきたいと思います。
決め球フォーク
野村 お化けフォークというのはどうやって生まれた?誰かに教わったの?
千賀 フォークボールを使いたいと吉見投手に相談させてもらって。
野村 うん。自主トレの時に?
千賀 はい。それで吉見さんが色々と練習方法だったりを教えてくれて。
千賀 握りとかは自分で見つけていけばいいという話をしてもらって。
野村 うんうん。
千賀 吉見さんの同級生で浅尾(拓也)さんという素晴らしいピッチャーがいて、吉見さんは「浅尾さんから教えてもらったから」と。それで吉見さんの言う通りにやっていったらいきなり落ちるようになったという感じですね。
野村 なるほどね。ありがとうございます。では大野さんの決め球は?
大野 まあ真っ直ぐか、僕もフォークボール。
野村 うん。
大野 ツーシームとも言ってますし、フォークでもあるんですけど。まあその2つですね。
野村 ちょっと握りを見せてもらっていいですか?ツーシームのときはちょっと握りが浅くなるのかな?
大野 そうですね。僕はツーシームがこれぐらいなんですけど。
野村 それで三振を取りにいくときは?
大野 もうちょっと深めというか。縫い目にそって。
野村 じゃあ縫い目に人差し指と中指の両方がかかってないとダメなんだ。
大野 そうですね。僕は縫い目にかけずにもっと深くというのではないですね。そうしたら抜けちゃいますから。
野村 うんうん。
大野 『ツーシームはシンカー系で変化』してほしいんですけど、『フォークは真っ直ぐ落ちて』ほしいみたいな。
野村 なるほど。ありがとうございます。
大野 千賀投手の前でフォークの話をするのはちょっと恥ずかしいです(笑)
千賀 いやいや(笑)
キャッチャー
野村 キャッチャーは大きい存在だと思うけど。
育成出身の千賀は同期で同じ育成出身の甲斐と共に這い上がり、2人の間には誰にも負けない絆がある。そんな甲斐からノーヒットノーランを達成した日の朝に1通のLINEメッセージが届いていた。
千賀 (甲斐)拓也も2試合スタメン外されていて、僕も3連敗中だったので。2人とも良くない流れの中で「今日はお前のために頑張るから。だからお前もしっかり付いてきて頑張れ」みたいな。
野村 うんうん。
千賀 朝にLINEをもらって相変わらず熱い男やなと思いながら。寝起きで思ってました。
野村 その日にノーヒットノーランだったからお互いに嬉しさ倍増だったろうね。
千賀 そうですね。やっぱり試合前にそういう気持ちを入れるための連絡というのはあの日が最初で最後で。やっぱりそういう日にできるのかというのは思いました。
野村 そして大野投手に監督として接していた谷繁さんからメッセージを預かっています。
大野 そうですか(笑) きっと厳しいんでしょうね。
野村 というコメントが届いています。このコメントを受けてどうですか?
大野 まあ谷繁さんらしいなと。褒められたことは一度もないんで。
野村 うーん。
大野 それが僕を成長させてくれたと思いますし。選手時代も監督時代も本当に誰よりも見ていてくれたんじゃないかなと僕は思ってますし、本当にその通りだと思いますね。
野村 今日は谷繁も来る予定だったんだけど、なんか今日はゴルフで来れないって。今度釘刺しとくよ(笑)
大野 まあ多分、僕よりゴルフを選ぶと思います(笑)
野村 そういうことか(笑)
涙 野球人生の恩師
野村 千賀投手、野球を通じて涙を流した経験は?
千賀 涙を流したのは・・・育成時代。
野村 うん。
千賀 それで段々みんなと同じように3軍の試合に出れるようになっていった中でストライクが入らなかったり、打たれた時に当時の3軍投手コーチの倉野(信次)さんから「悔しいなら練習するしかないだろ。まだお前はチームで一番下なんだから一番練習しなきゃダメだろ」と。悔しさのあまりじゃないですけど、それが一番印象に残ってますね。
野村 今まで一番の流した悔し涙というところですね。
千賀 はい。
野村 大野投手は?
大野 僕はけっこう泣くんですよね。
野村 それが最初で最後?
大野 プロに入ってから・・・あっ、まだありますね(笑)
野村 まだある(笑) じゃあ、もう1個だけ聞こうか(笑)
大野 この話は谷繁さんが登場しますよ。
野村 おぉ、じゃあぜひ。
大野 2013年だったんですけど、その年も(4月5試合0勝4敗で)5月ぐらいまで勝てなかったんですけど、(2013年4月26日の)マツダスタジアムで4回2失点でノックアウトを食らって。それでその日の食事会場でご飯食べる時に谷繁さんが目の前にいて、「お前頑張れよ やるしかないんだから」という話をしてもらった時に泣いてしまって。んでトイレに行って涙を拭いて戻って来た時に「泣けばいいんだよ 泣いて強くなっていくんだ」と言ってもらったのを覚えていますね。
野村 うーん。
大野 それでその次の試合で勝ちました。
野村 あぁ、良かったね。じゃあ、いい涙だったんだね。
大野 はい。
来シーズンに向けて
千賀 やっぱり来年、4年連続日本一というのをまず目標に持つことと、ライオンズにずっと負けているのでそこをやり返したいなと。
大野 2019年シーズンはノーヒットノーランもあって、最終的に防御率のタイトルも獲れて、個人的にはいいシーズンだったんですけど、やっぱりチームが7年連続Bクラスということで優勝に導けるようにやっていきたいと思います。
野村 ありがとうございます。応援します。
大野・千賀 ありがとうございました。
以上です。