2019219日にMBSテレビで放送された『戦え!スポーツ内閣』で211日に亡くなった野村克也との思い出を落合博満が語っています。

 

―訃報を知ったのは?

落合 家で起きてきて、「野村さん死んだよ」と。それで「えっ?」っていうのが最初。こんな急にね、前の日まで仕事をやっていて、そんなことになるのは思ってなかったんでね。最近、俺が年取ってきたのもあるんだけど、そういう話ばっかりでね。

 

落合とノムさんが初めて言葉を交わしたのは落合のプロ1年目の6月。当時の落合は25歳、ノムさんは44歳だった。

 

―最初に交わした言葉

落合 野村さんが西武のキャッチャーをやっていた時にロッテのバッターとして打席に入って、あの当時ってね、今みたいに練習始まって人に挨拶に行く時代じゃないんですよ、これから戦う相手ですから。ただ、野村さんと当時一緒にやってた(南海ホークスでノムさんとチームメイトで当時ロッテのコーチをしていた)高畠導宏さんていうコーチがいましてね。「初めて会う先輩にはちゃんと挨拶しとけよ」と。それで初めて打席に入って、こっちは何て挨拶していいか分からないんです。20何年もバリバリでやってるスーパースターですよ。だからどうやって入ったかも覚えてない。ただ、言われた事だけは覚えてる。「お前が落合か、よく話は聞いてるぞ」っていうのだけは残ってる。だから「よく話は聞いてるぞ」っていうのは高畠さんから話を聞いてるという事なんだろうけど。それで「頑張れよ」って言って。

 

―現役時代の野村克也をどう見ていた?

落合 一言で言えばホームランバッターでしょ。でも本人は絶対にホームランバッターとは言わないんだけどね。言わないんだけど、600本以上(通算657本塁打)のホームランを打ってるということは、突出したものがあったということでしょ。ただ、バッティングに関する考え方の接点っていうのは俺とは丸っきり違う。例えばね、「落合、何を待つ?」って聞いてきて「俺は真っ直ぐしか待ちませんよ」と。「じゃあ、変化球が来たらどうすんだよ」と。「いや、変化球は真っ直ぐよりもスピードが遅いんで、なんとか対応できるように工夫して打ちますよ」って。「あっ、お前やっぱりある意味天才だな。俺らみたいな凡人には分かんない」って言うわけですよ。

 

―監督論の違い

落合 頭で理解させて、それを身に付かせて、それを基に練習をした方がいいというのが野村さんの考えだと思う。俺と話をした時に、俺はそれも分かると。分かるんだけど、体力がなければいくらいいものを教わったって途中で壊れるよと。だから、俺は練習をさせる。それで体で覚えてもらう。だから、野村さんの野球のやり方というのはあの当時からするとずっと俺らの先をいってた。俺は逆に野球っていうのは先にいくんじゃなくて、資本は体でしょと。体を強くして、ずっと掘り下げていったのが俺のやり方なんだと。それでどっちが正しいのかは分からない。野村さんも「落合の考えも分かる」と言うし、俺も野村さんの考えも分かるって言うけども、じゃあそれをお互いにそれをするかっていえば恐らくしないんだろうなと思う。

 

 

―野村克也との一番の思い出は?

落合 阪神の監督をやってる時にこっちは評論家でしょ。解説者のみんなが野村さんのところに行かないんだって。「お前だけだよ、来てずっと話してくれるのは。俺嫌われてるのかな」って言うから「いや、そういうわけじゃないんでしょうけども」ってしか言いようがないじゃない。それでメイン球場じゃなくてサブグラウンドで、まあそこで2人で1時間も2時間も喋ってね。「練習見なくていいんですか?」って聞いたら、「別に俺は見なくていいんだ お前と喋ってる方がいい」って言うもんだから。

 

―その時の会話の内容は?

落合 ほとんど野球の話ですよ。野球の話しかしませんよ。それで表に出ないっていうそういう話ですよ。まあ、本当に野球好きだったんだろうね。

 

―野村克也が遺したかったもの

落合 もうちょっと自分の仕事を、野球を自分で考えなさいよっていう事を言いたかったんじゃないの。俺らから言われるんじゃなくて、自分の仕事をもうちょっと真剣に考える。自分はどうやったらこの世界で生きていくか。どうやったら野球が上手くなるかというのを自分で考えられないから、ああやって教えたんであって、本当は自分の事は自分で考えろよ、お前らもうちょっとしっかり野球やれよって言い遺して亡くなったんじゃないですか。言葉として終わらせるんだったらもったいないと思う。これを今度は生かさなきゃ。野球がある限りは語り継がれる人。

 

―野村克也へ最後のメッセージ

落合 うん。奥さんに甘えてください。野球界は野球界で、なんとか残されたメンバーでもっといいものにしていこうとする人がいっぱい出てくると思うんでね。一番会いたかった人に会いに行ったんだから、ずっと2人で仲睦まじく仲良くしてくださいっていう事ですかね。

 

 

以上です。

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