2019年12月28日にBS1で放送された『プロ野球SP「レジェンドの目撃者 三冠王・落合博満」』という番組で古田敦也が落合博満の打撃について分析しています。
―落合打法について
古田 落合さんの秘密というかね、それは右足一本にある。それぐらいの感じです。
―右足一本の意味とは
古田 バッターボックスではけっこう前に(内角寄りに)立たれるんです。それで左足を三塁側の方にすごく開いて。開いているんだけど、体重は左側には一切いかないんですよ。
古田 右足1本ぐらいの感じです。もう左足を軽く出してるだけという感じなんですよね。つまり右足が動かないから、目線もズレないんです。
頭がスイングで動かず目線がズレないことによってボールの見極めも可能になる
―その他の落合打法の奥深さ
古田 普通は飛ばしたいからインパクトゾーンは力を入れるんです。でも落合さんはわざとバットを遅らせていると思うんですよ。つまりインパクトするゾーンがキャッチャー寄りなんですよね。人よりも球を良く見られるっていう利点があるんですよ。わざと遅らせて、「ボールだな」って思えばハーフスイングで止めて、やっぱりそれがボールになるんですね。だから、よく『乗せて打つ』なんて言うんですけど、わざとフワーっと返さない。でも始動が遅れるとスイングスピードが出なくて飛ばないじゃないですか。そこを補うために落合さんは長いバットを持ってるんです。
―誰も真似できない
古田 「じゃあお前もやればいいじゃないか」と言われたりもするんです。右足一本でこんな事をやったら膝が壊れます。だから強靭な足腰が無ければできないんです。やりたいですよ。でも出来ない。そこまで計算された芸術的なバッティングなんです。
アナ 古田さんがかなり分析されてましたね。
落合 我々の時代っていうのはこのチームに勝とうと思ったら、「早く4番をゲームから消せ」って言うんだよ。
アナ うーん。
落合 それが当たり前の世界でね。それを掻い潜るためには打つんじゃない、俺は早く逃げることを考えた。だから、バッターボックスで前に(内角寄りに)立って開いていくんだ。開けば逃げれるから。
アナ そうか。
落合 踏み込んでいったら逃げられなくて当たるから。原点はそこなの。
アナ まずは自分を守る。
落合 うん。いかにして自分の体に当てないで逃げながらボールを打つかってことなんだ。
アナ あぁ、だからあの時代だからこそ生まれた打法だっていう。
落合 うん。今だったらみんな安心して打席に立てるんじゃない。それでボールは絶対に引っ張っちゃいけないんだ。レフトに向かって打ったら全部開いちゃうの。だから投げた人の所に打ち返すっていうのが俺はバッティングの基本だと思ってる。そこでタイミングがちょうどならセンターにいくし、早ければレフトにいくし、遅れればポイントがキャッチャー寄りになってライトにいくっていう。ただそれだけですよ。
以上です。