2020年11月8 日にBS1で放送された『ワースポ×MLB』で今シーズンで引退した元東京ヤクルトスワローズ&福岡ソフトバンクホークスの五十嵐亮太が現役時代をの思い出を岡島秀樹とフリーアナウンサーの市川いずみと共に語っています。
もくじ
23年間をザっと振り返り
アナ 改めて23年間の現役生活を映像で振り返って、どんな野球人生でしたか?
五十嵐 こうやって見ると本当に幸せ者だなと思いますね。900試合以上投げて、もちろん色んなことがあったんですけど、先発ピッチャーだったら多分ここまで投げれてないと思うんですね。中継ぎだから900試合投げられてその分、思い出が詰まった23年間だったのかなと思います。
ストレートへのこだわり
アナ まず五十嵐さんのプロ野球時代をお聞きしていきたいと思います。五十嵐さんと言えばやっぱりストレートですよね。スピードであったり、キレであったり、本当に素晴らしい武器を持って戦っていたと思うんですが、ズバリ五十嵐さんのストレートへのこだわりを伺ってもよろしいでしょうか。
五十嵐 僕の中ではストレートは空振りを取る球でもあるし、ファウルを取る球でもある。そして見逃しも時にも狙っていく球なので、変化球に比べてバリエーションが多いというか、そういった意味では使い勝手のいい球ではあったんですけど、まあ速い球を投げるというのがこの世界でやっていくための必要な条件だったと思っていたので。それを磨き続けて結果として全ての組み立てが出来たのかなと思います。
アナ なるほど。岡島さんは五十嵐さんの投球はどういう印象をお持ちでしたか?
岡島 ストレートが速いなっていうのが第一印象でしたし、結果的にリリーフで全て投げたんでしょうけど、やっぱりタフじゃないと出来ないことなんですよ。体つきもドンドンいい体になっていきましたし。
アナ はい。岡島さんは五十嵐の投げる姿をどうご覧になっていたんですか?
岡島 僕はジャイアンツにいたので、やっぱりキリキリ舞いでしたから(笑)
五十嵐 そんなことないですよ(笑) 苦労してますよ(笑)
岡島 やっぱり見ててイヤなピッチャーでしたよ。
五十嵐 ありがとうございます。
松井秀喜との対決
アナ そんな五十嵐さん、渡米前でヤクルトに所属していて思い出深い試合とかはありますか?
五十嵐 岡島さんが言われていましたけど、僕は巨人戦で苦労してる方だと思うんですけど、やっぱり松井さんの50号の当たりがライナーでレフトのスタンドに飛び込んだのは忘れられないないですね。
アナ この年、松井さんは自身初の50本塁打へあと1本と迫っていて、東京ドームのシーズン最終戦での対決だったんですよね。
五十嵐 はい。
アナ この勝負は本当に見応えがあったなという印象なんですが。どんな気持ちで投げていたんでしょうか?
五十嵐 僕は真っ直ぐで三振を取るか、もしくはホームランでもいいと思って投げていたんですけど、まあ見事に打ち返されました。でも松井さんにここまで真っ直ぐで勝負するピッチャーがいなかったので、意外と仕留めるのに時間がかかったのかなと僕の中で思ってて、それぐらい松井さんにはどのチームも変化球が多かったのかなと思います。
アナ なるほど。これホームランは打たれましたけど、このあと松井さんと言葉は交わされたんですか?
五十嵐 イニングが終わって僕がベンチに下がる時に松井さんが誰よりも早くグローブをつけて寄って来てくれて「五十嵐、ありがとね」っていう言葉をいただいて。僕自身もいい勝負できたと思っていたので、感謝の気持ちでいっぱいなんですけど、それは嬉しかったですね。
アナ 岡島さんはこの対決をご覧になってどうですか?
岡島 全部ストレートで攻めたというのは五十嵐くんらしいなと思いますね。僕だったら変化球を投げて勝負しますけど、真っ向勝負でストレートで勝負したのは素晴らしいなと思いますね。
五十嵐 でもあれは特別は特別ですよね。あそこまでのストレート勝負は後にも先にもないです。
アナ じゃあこれが一番の勝負だったんですね。
五十嵐 そうですね。真っ直ぐで三振を取りにいくか、打たれるならホームランっていう。これだけの対決でしたね。
アナ 五十嵐さんのストレートへのこだわりがたっぷり詰まった登板だったんですね。
メジャー時代
アナ では続いて五十嵐さんのメジャー時代についてお聞きしたいと思います。2010年にメジャーに行かれましたけど、「あっ、メジャーに来たな」と実感したのはどんな時でしたか?
五十嵐 メジャーか。どの瞬間でもアメリカに来て、「メジャーリーガーになったんだな」と思うんですけど。どうだろ・・・やっぱり初登板でマウンドに向かって走ってる時の景色は忘れられないですね。
アナ うーん。
五十嵐 多分いつもより早く走ってマウンドに向かってました。
アナ そうなんですか(笑)
五十嵐 はい。いつも僕はゆっくりマウンドに上がるんですけど、ちょっと走りながら風の音がスゴく聞こえていたので、そのイメージが残ってますね。
アナ やっぱり色んなことが、スケールや規模だったりで日本とは違うんですか?
五十嵐 違いましたね。僕はヤンキースでもメッツでもやってるんですけど、そのメッツの時にヤンキーススタジアムにチームバスで移動しているときも警察が先導して全部の交通を止めるんですよ。信号なんかもそうですし、フリーウェイでもそうなんですけど、ノンストップでヤンキーススタジアムに行く景色を見たときにはちょっとビックリしましたね。ここまでやるのかっていう。
アナ へぇー。
五十嵐 野球もそうなんですけど、そうじゃない時もスケールの大きさを感じましたね。
アナ 本当にスケールが全然違うんですね。
五十嵐 違いました。
メジャーで印象に残るバッター
アナ それで念願のメジャーデビューを果たされたんですが、当時実際に対戦されたバッターで最も印象に残っているバッターって誰ですか?
五十嵐 僕と同年代というか、年も近いんでくけどプホルズ。
アナ メジャーに名を残すバッターですね。
五十嵐 はい。
アナ 五十嵐さんは抑えているんですよね。2打数ノーヒット1フォアボールという対戦成績。
五十嵐 あぁ・・・でも僕の見てるイメージだと本当に打っている。ボール球にも手を出さないですし、ホームランをよく打つバッターだったので。
アナ はい。
五十嵐 いいイメージはなかったんですけど、結果的に抑えたんでしょうね。
アナ 岡島さんは五十嵐さんがメジャーに来られて、投げているのを見てどんな印象でしたか?
岡島 当時は日本で活躍していて、メジャーではどうなのかなと思って見ていたんですけど、日本時代そのままで投げていましたよね。だからプホルズ選手のようなバッターと対戦しているの見て本当に感動しましたよ。僕も励まされましたね。
アナ プホルズ選手は今もメジャーで活躍されています。五十嵐さんとは同年代の選手なんですよね。
五十嵐 そうなんですよ。だから何歳までやるのかなと。アメリカで40歳を越えてなかなか現役の選手って少ないので、これはどこまで行くのかなっていうのは楽しみですね。
アナ はい。アメリカに渡られて、いいバッターの共通点というのは何かありますか?
五十嵐 アメリカ時代にかからわずなんですけど、ボール球に手を出さないバッターですね。いいところに投げてもカットしたりで、なかなか空振りを取らせてくれない、三振が取れないというのは典型的ないいバッターですね。
アナ 遠くに飛ばしたりじゃないんですね。
五十嵐 そうですね。
再び日本球界へ
アナ さあ、そして2013年に五十嵐さんは日本球界に復帰されて、ソフトバンクで6年間プレーされましたが、2014年には岡島さんとも一緒のチームでプレーされたんですよね。
五十嵐 はい。
アナ 岡島さんは五十嵐さんというのはどんな印象でしたか?
岡島 僕が後から入ったんですけど、五十嵐投手と一緒にやるのが楽しみだったので、一緒にできたのは良かったなと思います。
アナ 五十嵐さんはどんな投手でしたか?
岡島 キャンプ初日からスゴく練習熱心で、本当に練習の鬼だったんですよ。
アナ 練習の鬼(笑)
岡島 キャンプ初日から朝早くにアーリーワークをしていて、それが一番印象があって、五十嵐投手はスゴいなあって。それで周りの選手にいい影響を与えていましたね。
アナ 五十嵐さん、そうだったんですか?
五十嵐 そうなんですよ(笑)
アナ はい(笑)
五十嵐 別に練習することで何かをアピールするとかはなくて、自分に必要なことをやっているだけだったんですけど。もちろん岡島さんの練習もスゴかったですし、自分のやるべきことを淡々とこなしていくというのはそんなに変わらないんじゃないかなと思います。
アナ 2014年はお二人ともソフトバンクのブルペンを守られたと思うんですが、岡島さんとの思い出で何か印象に残っていることはあるんですか?
五十嵐 僕が5回ぐらいに投げる時は岡島さんは3回ぐらいに投げていたので、試合早々からスイッチが入ってたので、とてもじゃないけど話し掛けられるような感じではなかったですね。
岡島 そうですね。スイッチが入るとそういうタイプなので(笑) スイッチオフの時はリラックスしているんですけど、そのオフの姿は見てないと思うんですよね。
五十嵐 そうです。オフの状態を見れてないんですよ。
アナ もうオンモードの状態の岡島さんは話し掛けられないぐらいの状態だったんですね。
五十嵐 ちょっと怖いぐらい。ただああいう姿というのは他の選手にとってはグッと入り込めるので非常にいい空気を作ってもらっていたなと思いますね。心強い先輩でした。
アナ なるほど。
リリーフのこだわり
アナ 五十嵐さんは23年間、全てリリーフピッチャーとして過ごされてきましたけど、リリーフのポジションのこだわりはなどはどんな思いがあったんでしょうか?
五十嵐 こだわり・・・難しいですね。リリーフだから先発をやらせてもらなかったのかと思われちゃうんですけど、そんなこともなく、結果的にこうなったんですけど。まあ、マウンドに上がって打たれようが抑えようが、次の試合に切り替えていくという繰り返しだったので、切り替えるのが上手くなったのかなと思いますね。
アナ リリーフでの気持ちの切り替えって、最初から誰でも出来るものじゃないと思うんですけど、最初からそういうものは上手くやれてたんですか?
五十嵐 上手にやれてなかったと思います。若い頃は悔しくて寝れないこともありましたし、どう切り替えるのかっていうのは次で結果を残すまで上手く出来てなかったので、若い頃は苦しい時間の方が多かったですね。
アナ 気持ちの切り替えが上手く出来るようになったのって、いつ頃だったんですか?
五十嵐 遅かったと思います。30半ばぐらいかな。それぐらいだったと思います。
アナ それは誰かにこうした方がいいよってアドバイスされたんですか?
五十嵐 それはアメリカにいる時に黒田博樹さんと一緒にチームで、その時のクローザーがマリアノ・リベラだったんですけど、ある試合で黒田さんが8回まで投げて9回にリベラが打たれて、黒田さんの勝ちが消えて、ヤンキースも負ける試合があったんです。
アナ はい。
五十嵐 その試合終わりでリベラが黒田さんの横でシャワーを浴びてて、その時にリベラがどういう雰囲気になってるのかなって黒田さんがチラっと見てみたら、リベラが鼻歌を歌ってたみたいなんです。
アナ スゴいですね(笑)
五十嵐 それを聞いた時にクローザーはこれぐらいのメンタリティがないとやっていけないのかなと思って、それが僕の中で非常に勇気づけられて。色んな後輩にこの話をしてきたんですけど、リリーフは先発ピッチャーの勝ちを消すかもしれないというプレッシャーを持ってても悪くはないんですけど、そこに執着してしまうと試合で自分のパフォーマンスが出せるかって言うと、僕はそうじゃないと思ったので。
アナ はい。
五十嵐 その辺の気持ちの切り替えもそうですし、試合に向かう姿勢であったりは非常に勉強になりましたね。
アナ なるほど。そんなところにヒントがあったということですね。
五十嵐 はい。
アナ そして五十嵐さんはリリーフとして906試合に登板して通算防御率は3.20です。岡島さん、スゴい数字ですよね。
167ホールド 70セーブ
防御率3.20
岡島 スゴいですね。全てリリーフですからね。
注目している現役選手
アナ では、五十嵐さんが現役の注目している選手はいますか?
五十嵐 石川(雅規)ですね。
アナ 石川投手。同学年なんですよね。
五十嵐 そうですね。僕らの年でやってるのがもう石川だけになってしまったんですよ。(※能見篤史も現役続行すると思いますが忘れているのかもしれない)
アナ なるほど。現在の石川投手は173勝なんですけど、やっぱりまだまだ勝ち星を積み重ねてほしいですよね。
五十嵐 重ねますね。彼の場合は練習の量であったり、野球に取り組み方もそうなんですけど、あとは考え方。
アナ はい。
五十嵐 僕には到底考えられないことを考えていたりとか、左ピッチャーだから岡島さんもそうなのかもしれないですけど、独特なニュアンスだったり言葉遣い。どこまでやるのかなって思いますね。計り知れないです。
アナ 200勝はどうでしょうか?
五十嵐 普通にいきます。
アナ 普通にいきますか?
五十嵐 普通にいきます。
アナ 楽しみです。最後にキャッチボールもされたんですよね。
五十嵐 はい。若い頃を思い出しながら。お互いに若い頃の球の勢いはないんですけど(笑) でもやっぱり今でも非常にキレイな真っ直ぐであったり、変化球であったり、コントロールは素晴らしいですね。
アナ 私たちも石川投手の200勝を応援したいと思います。
五十嵐 はい。
野球で何かを感じた
アナ 2020年10月に23年間の現役生活にピリオドを打った五十嵐さんですけど、23年間で野球人生を振り返って、このように言葉を残されました。
アナ ということですが、野球の神様に何か伝えたいことはあるでしょうか?
五十嵐 そうだなぁ・・・何かを感じられる時って本当に少なかったので、もう少し感じさせてくれる時があれば良かったなと思うんですが、なかなか上手くいかなかったのも野球の魅力なのかなと思います。
アナ はい。今日はたくさん素敵な話をありがとうございました。
五十嵐 はい。
以上です。