2021年12月4日にBS1で放送された『球辞苑』でメジャーリーグや広島で活躍した黒田博樹が『見逃し三振』について語っています。
―黒田にとって一番気持ちのいい見逃し三振は?
黒田 昔は僕もどっちかと言うと速球派という部類のピッチャーだったので、やはり真っ直ぐでインサイド。インサイドはインサイドで気持ちいいものがあるというか、どっちかと言うと手も足も出させない見逃し三振を取るというのはインサイドっていうので、自分の中では気持ち良かったと記憶してますね。
2007 12.5%
2008~2014はMLB
2015 27.6%
2016 36.8%
カットボール 20
スライダー 15
ストレート 3
スプリット 3
―速球派からのスタイルチェンジのきっかけは?
黒田 僕がフロントドアを投げ出したのはアメリカに行ってからなんですよね。それでちょっとアメリカでの自分のピッチングスタイルに行き詰っていたところがあって、それでたまたま300勝以上しているグレッグ・マダックスがドジャースに移籍してきて、彼に色んなアドバイスを受けて、僕もツーシームをトライしてみようというのが始まりですね。
黒田 マダックスが言ってたのは「左バッターのお尻辺りを見なさい」と。特にアウトコースを強くコンタクトしたいバッターはどうしても踏み込みが強くなるので、インサイドからフロントドアを投げると、間違いなくインサイドの反応ができないというのをまず教えてもらいましたね。やっぱりバッターは軌道を見ると思うので、自分がイメージした軌道から外れたボールには反応が間違いなく遅れると思うので、左バッターはあんまり意識できないと思う。それがしっかりとコントロールできればかなりの武器になると思いますね。
―フロントドアを最大限に生かす配球について
黒田 バッターはフォークボールを意識すると、どうしても体が前傾というか前に体重が掛かりやすいので、そこでインサイドからフロンドドアを投げる。あとアウトコースのツーシームを追い掛けさせると、どうしてもバッターは踏み込まざる負えないんで。
―見逃し三振は狙っている?
黒田 フロントドアに関しては凡打をさせるというよりは見逃し三振狙い。意表を突くボールですよね。これで打ち取るというよりも、バットを出させない。それだけ餌を撒いて意表を突くボールですね。
―試合前にある下準備をしている
黒田 審判の方にも。新しくジャッジしてもらうアンパイアの方には「僕は投球スタイルがこういうものなので、外のボールからストライクゾーン、内のボールからストライクゾーンに入れるボールがあるので、すいませんが最後まで見とってください」というのをキャッチャーから伝えてもらってましたね。それをするとアンパイアの方も人間なんで最後の最後までしっかりと見るじゃないですか。あとは軌道をそこまで言っておけば、ゾーンにボールが入って来なくても入って来たと思ったら手を上げてしまう可能性もゼロではないですから(笑) 多少その変化が少なくてもちょっと内に入ればストライクと言ってしまう可能性も人間なんであるかもしれないですし。そういうのも日本に帰って来た時は色々とやってましたね。
―NPB復帰後、最も多く見逃し三振を奪ったバッターである鳥谷敬の印象
黒田 やっぱりあれだけのバッターなので、言い方が適切か分からないですけど、結構捨てれるバッターなんですよね。ヤマを張れるというか、予想とは逆のボールが来たら仕方がないっていう事ができる、そこまで上り詰めたバッターだと思うので。逆に言うと、そういうバッターの方が僕にとっては見逃し三振という部分では取りやすいんじゃないかなと。だから鳥谷選手とか、ジャイアンツの阿部(慎之助)コーチとかは、もちろん打たれたイメージもありますけど、全く逆にボールが来たら仕方ないと考えてすんなりベンチに帰って行くというのはあったような気がしますね。
―最後に黒田にとって見逃し三振とは
黒田 ピッチャーとして一番リスクの少ないアウトの取り方。やっぱりバッターにアクションを起こさせずにアウトを取るというもの。逆にバッターが振ってくると何が起こるか分からないですし、またそこでボールが当たってしまうと何が起こるか分からないんで。だからピッチャーとしては一番リスクの少ないアウトの取り方だと思いますけどね。
以上です。