2013年の3月にNHKで放送された「サンデースポーツ」で中日で監督をしていた落合博満が大谷の二刀流挑戦について大野豊とNHKのアナウンサーと共に語っています。
アナ 落合さん、大谷翔平選手が挑戦している野手と投手の二刀流。どういうふうにお考えですか?
落合 私は大賛成。
アナ 大賛成ですか・・・。
落合 はい。周りはみんな否定的なことを言いますよね。やる前から結果ありきで『やめた方がいいじゃないか』とか『投手なら投手、野手なら野手でやった方がいいんじゃないか プロはそんなに甘くない』とみんな言いますよね。大野さんにしても俺にしても、ピッチャーで苦しんだりバッターで苦しんできた。どれだけ大変なのかは分かっているんだけども。ここ2、30年ぐらいですかね、選手を評して個性が無くなったと言われて久しいですよね。両方チャレンジするこの二刀流ほど、これほど話題性があって個性がある人間ってここ3、40年で野球界に出て来ています?
アナ 3、40年・・・いないですよね。
落合 いないでしょ?
アナ はい。
落合 だったら、俺はやっている姿を見てみたい。1番今年(2013年)のペナントレースで興味があるのが大谷が、投手として野手として、どういう姿を見せてくれるのかなっていうのが1番期待がある。
アナ へぇ~なんか意外な感じもするんですけども。大野さんはどう感じますか?
大野 まあ、落合さんが言われた事もそうだなと思いますし僕もそう思いますけど、やっぱり投手出身の者としては、あれだけのボールを投げてあれだけの素材があるのであれば、やっぱりピッチャーとして育っていく姿を見てみたいですね。でも、二刀流に挑戦することは夢があって楽しみがありますね。
落合 去年(2012年)のドラフト会議で大谷、藤浪、東浜。ピッチャーでいえばこの3人ですよね。まあ、菅野は1年浪人していますから別にして。それでこの3人の中でピッチャーとして欲しいな、でもバッターとしてもトップクラスの素材だよなっていったら大谷なんですよ。
アナ はい。
落合 普通だったらピッチャーで入ってきて野手に転向するのは、球団と自分も含めて、どっちでいくんだと明確な答えが出て、それじゃあ、やってみようということでやらせるわけでしょ。でも、今回は日本ハムと栗山監督と大谷家でどういう話し合いだったのかは誰も分かりませんよね。それでこの時期(2013年3月)にきて両方をやらせているということはその三者で合意に達しているはずなんですよ。そういうふうに考えると、やりたいようにやらせてみたらいいじゃん。
アナ はい。
落合 途中でやめてこれ一本でいけと言ったら、これ両方ダメになるやつですよ。
アナ そうですか。では、ここで映像を見ていきましょうか。まずはバッターの様子から見ていきましょう。
2013年キャンプ紅白戦の打者・大谷の映像を見ながら
アナ オープン戦などではこれまでキャンプなどを通じて野手としての実戦の経験を多く積んできました。この変化球に対しての反応はいかがですか?
落合 変化球ってね、軸でキチっと待てることさえ出来れば意外と簡単なんですよ。
アナ 今のはインコースの球を打ちましたけども。
落合 まあ、インコースってよりも恐らく真ん中でしょうけども。このバットの使い方とかバットの出方を見れば、190センチ以上あるんでしょ?そんなに(大谷にとっては)インサイドのボールではありませんよ。
アナ 今の打ち方を見てどう思われましたか?
落合 いや、バッターとしても一級品なんですよ。去年のドラフトの中ではトップクラスなの。
アナ はい。
落合 それで、両方兼ね備えていて両方持っているもんだから、じゃあどっちなんだってことなんだよ。俺は普通に考えれば今だったらピッチャーで使いたい。
アナ おぉぉ。では、ピッチャーの映像を見てみましょうか。
2013年3月21日のオープン戦の投手・大谷の映像を見ながら
アナ 先週木曜日にオープン戦に登板しました。なんといっても最速がこの157キロ。大野さん、どうですか?
大野 157キロのボールを投げるピッチャーですからね。そういないわけですからね。
落合 投げ方もいいよね。これを見ちゃうとピッチャーだよなって。バッターとしても見てもバッターでいけるよなって。
アナ このスライダーを見てください。(外角に決まっているが右バッター嶋が仰け反ってしまうスライダー)
落合 極端に言えば、これ甘い球なんですよ。
大野 そうですね。それでも嶋が仰け反っていますもんね。
落合 これが190センチ以上の長身から投げ下ろしてきてバッターの目線からすると自分の体に近付いてくるように見えちゃうもんだから仰け反っちゃう。
アナ はい。
落合 これが慣れた時だったら今のは1番甘いボール。
アナ それでも落合さんはピッチャーとしての魅力を感じると。
落合 両方の魅力があり過ぎ。
アナ 実際に二刀流を実現するのは難しいと思うんですが。
落合 あのー・・・個人的な意見を言わせてもらえれば、144試合を考えて144イニングの規定投球回数を投げたら一流のピッチャーと言われるよね。そして、バッターだと約450打席が規定打席数です。
アナ はい。
落合 これが初めて達成されることになったら凄いなと思う。だから、結果はどうでもいい。
アナ 数字が悪くても規定の数をクリアすれば。
落合 数字が悪くてもこれを両方やれたら。大野さんがキャンプを見に行って投げ込みをしてないと聞いたんだけど、今すぐ使うなら中継ぎなんだろうなと思う。
大野 それだとリリーフで40試合から50試合ですよね。
落合 うん。それぐらい出来れば大したもんだと思う。
アナ それはバッティングをしながら出来るもんなんですか?
大野 それを今挑戦しているわけですから、それを我々が見ていくしかないですよね。
アナ 落合さんがもし監督として大谷選手を見たら、投手大谷と野手大谷を二刀流で育てますか?
落合 これは本人というよりも監督、バッティングコーチ、ピッチングコーチ、外野守備コーチ、それとトレーニングコーチがどうやって練習メニューを組んで1年をどういうモノの考え方をするのかということで練習内容から何から喧々諤々と会議をしながら方向性を出さないと生半可では出来ないと思う。それだけ大変なこと。
アナ 大野さんはキャンプで大谷選手をご覧になりましたが。
大野 ピッチャーでやるんであればピッチャーの練習の中で投げ込み等をしなきゃいけないのにそれをあまり出来ていないということで練習の時間が長い中で役割分担の練習は本当に大変だと思うんですよね。そこらあたりは本人も分からないと思いますので、落合さんが言われた通り監督やコーチと話し合ってしっかりとした練習メニューを組んであげるというのが必要でしょうね。
アナ 実際に落合さんが監督だったら二刀流に挑戦させますか?
落合 本人がやりたいって言うんだったらやらせますよ。どっちをやらせても才能があるからね。
以上です。
2013年3月で高校を卒業したばっかり大谷を見た落合の言葉でした。